スクワット計算を実戦で使い切る|1RM換算とプレート設計手順と誤差

man-dumbbell-curl 重量換算と目安
同じ重量でも回数や深さ、体重、当日のコンディションで意味が変わるのがスクワットです。
その差を埋めるためにあるのがスクワット計算で、1RM換算の式、相対強度、RPEやバー速度など複数の指標を組み合わせることで、練習の設計と振り返りが一貫します。
この記事では、代表的な換算式の長所短所、丸めとプレート組みの現実的な決め方、目的別の計算への落とし込み、そして週次更新の運用までを一気に示します。今日の一本を、来週の最適解へつなげるための実務手順としてご活用ください。

  • 換算は式の得意回数域を踏まえ範囲で扱う
  • 相対強度と深さの統一で比較の土台を作る
  • 丸めは重量誤差より再現性を優先して決める
  • 目的別に%・回数・RPEを先に定義する
  • 週次に中央値を更新し設計へ戻す
  • 装備やラック高は固定して誤差源を減らす
  • 動画の角度と合図を固定し品質を可視化
  • 停滞は調整の合図と捉え設計を刷新する

スクワット計算を実戦で使い切る|基礎から学ぶ

数字は便利ですが、前提が揃わなければ比較になりません。最初に深さと可動の基準測る回数域、そして使用する換算式を決めておきます。ここでの一貫性が、計算を意思決定に変える鍵になります。以降では式の得意領域と誤差の扱い方、動画基準と中央値運用まで、現場で迷わない順で整理します。

代表的な推定式の使い分け

現場でよく使われるのはEpley、Brzycki、Lombardi、Mayhew、O’Connerなどです。Epleyは中回数域で扱いやすく、Brzyckiは低回数側で安定、Lombardiは乗数型で高回数が得意です。式ごとに得手不得手があるため、固定の一本ではなく2本を併用して中央値を採用すると短期の誤差に強くなります。

回数域と当てはめの妥当性

5回〜10回のトップセットは日常練習で取りやすく、推定1RMに換算しても外れにくい帯です。2回や3回は疲労の影響や緊張でぶれやすく、12回以上はフォームの変化が混じります。基本は5回か8回で測り、別帯のデータは補助的に扱うのが運用しやすいです。

RPEと速度で補正する意義

同じ5回でも、余力1回と余力3回では意味が違います。RPEやバー速度の初速を併記すれば、回数だけでは見えない疲労を定量化できます。速度が初速から大きく落ちた場合や、RPEが予定を超えた場合は、推定1RMの信頼度を下げて扱うなどの「重み付け」を事前に定めておきましょう。

動画基準と再現性の確保

大腿が床と平行よりやや下を基準にし、側方45度の固定角度で撮影します。しゃがみの最深点と立ち切りの合図も毎回同じにすると、翌週の比較が成立します。浅くなった更新やラックアウトの乱れが大きい記録は、計算表には残しつつ中央値からは外すと品質が上がります。

中央値運用と外れ値の扱い

直近4〜6週の推定を並べて真ん中を採用します。調子の良い一本が出ても、中央値が動くまでは設計を変えません。逆に不調が続き中央値が下がったら、量と休息を見直す合図です。単発で一喜一憂せず、中央値に意思決定を委ねることで、長期の伸びが安定します。

注意:式は万能ではありません。同じ条件で測ること、複数式の中央値を使うこと、範囲で意思決定することが、現実的で安全な運用を支えます。

ミニ用語集推定1RM=式で算出した最大想定。相対強度=挙上重量÷体重。中央値=外れ値に強い中心値。初速=1レップ目のバー速度。RPE=主観的きつさ。

ミニ統計:回数とRPEを併記すると翌週の負荷決定時間が短縮し、動画基準の固定でフォーム逸脱の自己検出率が高まる傾向があります。中央値運用は単発更新のノイズを吸収し、四半期の継続率を押し上げます。

スクワット計算の手順とテンプレート

スクワット計算の手順とテンプレート

運用を楽にするには、測る→換算→丸め→記録→見直しの流れをテンプレ化します。ここでは式の選定から丸めまでの具体手順と、すぐ使えるサンプル表を示します。計算は範囲で扱い設計は中央値で決めるの二本立てを守ると、迷いなく翌週へ繋げられます。

運用ステップの全体像

1. 同じ深さと角度で5回か8回のトップセットを実施。
2. EpleyとBrzyckiで推定1RMを二点算出。
3. 二点の中央値を採用し、相対強度へ変換。
4. 目的別の%に当て込み、セット×回数×RPEを決定。
5. 丸め規則で実重量へ置換し、プレート組みを決める。
6. 翌週、同条件で再テストし中央値を更新します。

換算サンプルと読み方

テスト 重量×回数 Epley推定 Brzycki推定 中央値
週1 120×5 140.0 139.1 139.6
週2 122.5×5 142.4 141.4 141.9
週3 125×5 145.0 143.8 144.4
備考 深さは平行よりやや下、RPE8目安、ベルト/シューズ固定

表の中央値列を体重で割ると相対強度が出ます。例えば体重70kgで中央値144.4なら×2.06です。この値を基準に、来週は75%×5×3、80%×3×3のように設計へ直結できます。

丸め方と記録のテンプレ

丸めは2.5kg刻みを基本とし、片側の最小プレートに合わせて上下どちらに寄せるかを事前に決めます。記録テンプレは「日付/重量×回数/RPE/初速/深さ可否/備考」。この型を崩さないほど、翌週の判断が速くなります。

手順ステップ

1. 二式で推定→中央値採用。

2. 相対強度に変換→目的%に当て込み。

3. 丸め規則で実重量→プレートを確定。

4. 動画と一行メモを添えて保存。

5. 週末に中央値と成功率を見直す。

チェックリスト:回数域は適正か、深さが統一か、二式の乖離が大き過ぎないか、丸め規則が固定か、動画角度と合図は再現できているか、睡眠と脚の張りを記録したか。

プレート計算と丸めの現実解:kgとlbの橋渡し

設計通りに持てるかは、最終的にプレートの組み方で決まります。ここでは片側の配分手順、kgとlbジムの違い、端数の扱いを整理し、迷いなくラック前に立てる実務を示します。丸めは誤差を最小化するのでなく、再現性を最大化するために行うと考えると、判断が一貫します。

片側配分の基本手順

バー重量を差し引き、片側の必要重量を計算します。20kgバーで150kgなら片側65kg。25kg→20kg→10kg→5kg→2.5kgの順に置き、端数が残ったら規則に従い上か下へ丸めます。組んだ後は左右の順序と向きを目視確認し、外れ止めを装着してから試挙に入ります。

kgとlbジムの使い分け

lbジムでは45lbバーや35lbプレートが混じるため、片側計算の表を事前に用意しておくと安全です。kg設計をlbへ写経するときは、5lb(約2.27kg)単位の丸めを許可し、当日の初速やRPEで微修正します。変換は正確さより運用のシンプルさを優先すると、ミスが減ります。

丸め規則の決め方

  1. RPEがきつい日は下方向に丸める規則を採用。
  2. フォームが安定し速度が保てる日は上方向に許容。
  3. 微妙な端数は翌セットのレップを±1で調整。
  4. 四半期内は同一規則で一貫、期替えで再評価。

比較ブロック

上方向丸めのメリット:心理的に前向き、更新を拾いやすい。
デメリット:疲労が蓄積し翌週に響く可能性。

下方向丸めのメリット:成功率が上がり技術練習が充実。
デメリット:短期の更新を逃すことがある。

よくある失敗と回避策

失敗1:プレートの向きが左右で異なる。→ 片側ずつ声に出して確認し、向きは刻印外向きで統一。

失敗2:端数に固執して準備が長引く。→ 丸め規則を先に決め、当日は迷わず適用。

失敗3:lbジムでバー重量を誤認。→ バー種別を入室時に確認、配分表にメモ。

目的別に計算へ落とす:筋肥大・最大・技術の設計

目的別に計算へ落とす:筋肥大・最大・技術の設計

同じ推定1RMでも、狙いが違えば最適解は変わります。筋肥大、最大挙上、技術の三局面に分け、%・回数・RPE・休息の目安と、計算からメニューへ落とす考え方を示します。局面は週内で混ぜてもよいですが、四半期の主目的は一つに絞ると前進が鮮明になります。

筋肥大を狙う期の設計

70〜80%で6〜12回、RPE7〜9を中心に、週12〜20セットが標準的です。計算表では中央値の×0.75を起点にし、テンポ指定やポーズを混ぜて刺激の質を確保します。丸めは下方向を基本にし、最終セットだけ上方向で挑戦枠を一つ置くと精神的な張りが出ます。

最大挙上を狙う期の設計

82.5〜90%で2〜4回、RPE7〜8、休息3〜5分。トップセットは粘らず成功率を優先し、バックオフで70%台を技術の流しとして入れます。中央値が動くまでは%を固定し、初速が大きく落ちた日は早めに切り上げて回復を優先します。

技術を整える期の設計

  • 60〜70% 3〜5回、ポーズやテンポで可動を固定
  • 中足部上の軌道と胸郭の位置をセット間で再現
  • 翌日の重い日の成功率を上げることを目的化
  • 動画で最深点と立ち切りの一貫性を評価

ミニFAQ

Q. 三局面はいつ切り替えるべきですか。
A. 四半期ごとが目安。中央値と動画品質が頭打ちになったら切り替えます。

Q. 目的が複数ある時は。
A. 主と従を決め、従は維持目標に落として設計します。

最大期に粘り過ぎて停滞していた選手が、技術期を2週挟み丸めを下方向に統一したところ、翌月に中央値が持ち直し安定更新へ移行しました。

進捗判定とベンチマーク:計算を現実へつなぐ

計算はあくまで設計のための道具です。ここでは四半期の推移をどう読むか、成功率や深さの合否をどう扱うか、そして現実的なベンチマークをどのように決めるかを提示します。数字の良し悪しより再現性の改善を評価軸に据えると、無理のない伸び方になります。

四半期の推移を読む

中央値推定1RM 成功率 深さ合否 備考
W1 140 80% 睡眠不足
W4 143 85% 丸め規則を固定
W8 146 88% 速度の初速安定
W12 147 90% 技術期を挟む
備考 中央値が停滞しても成功率と深さの一貫性が向上していれば設計は良好

中央値の上昇が鈍っても、成功率や深さの○が増えていればOKです。次の期で量か休息の配分を微調整し、再び中央値を押し上げます。

現実的なベンチマークの敷き方

体重×1.5や×2.0といった相対指標は強力ですが、個々の歴や年齢で差が出ます。そこで「四半期で×0.05〜0.1伸ばす」「成功率を+5%」「深さ合否を95%へ」といった複線ベンチマークを引き、どれか一つでも達成すれば進捗と見なす仕組みにします。

安全と更新のバランス

更新を狙うほど疲労は溜まります。安全域を超えないために、速度が初速から40%落ちたら終了、RPEが予定より+1ならセット短縮、睡眠が不足した日は丸めを下方向、などのガードレールを事前に設けます。数週間単位で見ると、こうした小さな判断が大きな更新に効きます。

ベンチマーク早見:四半期の中央値+2〜5%、成功率+5%、深さ合否95%、相対強度+0.05、動画の固定角度の遵守率100%、丸め規則の逸脱0回を目標に置くと、現実的で継続的です。

注意:数字が先行してフォームが崩れた更新は、表では灰色扱いにし、中央値へ反映しない運用にします。短期の見栄より長期の再現性を優先しましょう。

自動化とシート設計:計算ミスをゼロに近づける

毎回の手計算は煩雑でヒューマンエラーも起こり得ます。ここでは最小の入力で設計が返るシート設計、アプリ連携の考え方、そしてレビュー時の比較視点をまとめます。入力は回数・重量・RPE・深さ可否の四つに絞ることで、続けやすさと精度が両立します。

スプレッドシートの設計指針

入力欄は「日付/体重/重量×回数/RPE/深さ可否/備考」。計算欄でEpleyとBrzyckiを並べ、中央値と相対強度を自動表示。次に目的%のテンプレ(筋肥大・最大・技術)を用意し、丸め規則(上/下/近傍)をプルダウンで選べるようにします。出力欄にはプレート配分の文字列を返し、印刷用の簡易カードを作るとラック前で迷いません。

アプリ連携とデータの持ち方

速度計測アプリや心拍計と連携し、初速や睡眠のデータを自動取得すると、主観に寄らない振り返りが可能です。データは週次のピボットを作成して中央値を俯瞰、四半期でCSVにエクスポートしてバックアップを取り、期替え後の比較に備えます。

レビューの観点と更新ループ

週次では中央値と成功率、月次ではフォームの一貫性、四半期では相対強度の推移に着目します。停滞が見えたら設計テンプレの%や休息を再定義し、丸め規則や補助種目を微修正します。レビュー→再設計→実行→記録のループを定着させることが、長期の伸びを生みます。

比較ブロック

シート運用:柔軟で無料、細かいカスタムが可能。→ 設定コストが最初に必要。
専用アプリ:入力が速く可視化が豊富。→ カスタム自由度が低い場合がある。

手順ステップ

1. 入力を四要素に絞る。

2. 二式→中央値→相対強度を自動化。

3. 目的テンプレと丸め規則を選択式に。

4. 週末にピボットで中央値を更新。

5. 四半期でCSV化し比較とバックアップ。

ミニ用語集丸め規則=端数の上下処理。ピボット=集計の切替表示。テンプレ=定型設計。可視化=グラフやカードでの表示。

まとめ

スクワット計算は、式を当てて数字を出す作業ではなく、同じ条件で測り、範囲で判断し、翌週の設計へつなげるための仕組みです。深さと動画の基準、二式の中央値、相対強度、丸め規則、RPEや速度といった補助指標を一つの流れに束ねれば、判断は自動化され迷いが消えます。プレート配分やkg/lbの橋渡しもテンプレ化し、週次と四半期のレビューで小さな改善を積み重ねてください。安全を土台に再現性を磨くほど、平均は自然に押し上がり、計算は現実の更新へ変わります。