背中種目で握力が先に尽きてしまうと、広背筋や僧帽に十分な刺激を入れにくくなります。そこで役立つのがパワーグリップです。バーやダンベルに瞬時に巻き付けられ、引く力をロスなくターゲットへ渡せます。特にゴールドジムのモデルはラバーの張りと面の広さが扱いやすく、ジムの標準装備としても見かけます。この記事ではサイズの選び方、正しい巻き方、種目別の使い分け、手入れと交換サイクル、握力育成との両立までを一気通貫で解説します。
読み終えたら、そのままジムに持ち出せる実践手順として使えます。
- 目的に合わせたサイズの選定基準を理解します。
- 装着の順番と巻き方向を固定して迷いを無くします。
- 種目ごとの引っ掛け位置で刺激を狙い分けます。
- 汗や匂いを抑えるメンテの習慣を身につけます。
- 握力を落とさない練習設計を週単位で回します。
ゴールドジムパワーグリップを賢く選ぶ|背景と文脈
まずは道具理解です。パワーグリップは手首バンド、掌パッド、ラバータブの三要素で構成されます。ラバーの張り、パッドの厚み、バンドの固定感で使い勝手が変わります。ゴールドジムの製品は面が広く、巻き直しが少ないのが利点です。サイズは手のひらの長さや手首の太さで選びます。数値にこだわりすぎず、手首が遊ばないこととパッドが指の付け根に収まることを基準にしましょう。
正規品を選んでトラブルを避ける
長く使う道具ほど品質差が現場で効きます。縫製が粗いとバンドが伸び、ラバーの摩耗が早まります。公式販売経路や正規取扱店を選ぶと、初期不良やサポートで困りにくいです。外箱とタグ、縫い目の始末、ベルクロの噛みの強さを軽くチェックします。ラバーの端部が波打つものや、接着ムラがあるものは避けます。通販なら到着後すぐ装着し、手首周りのフィットとパッド位置を確認しましょう。
サイズは「バンドの余り」と「パッド位置」で決める
サイズ表を眺めるだけでは迷いが残ります。試着時はバンドを一穴分強めに締め、ベルクロの余りが極端に長すぎないかを見ます。次にパッド下端が手のひら中央からやや下に来るかを確認します。高すぎると指が曲がりにくく、低すぎるとラバーが余って巻きにくいです。手首骨の出っ張りにバンド端が当たる場合はサイズを上げるか、薄いリストバンドを下に噛ませると快適になります。
素材の違いと選択の考え方
ラバーは張り感が命です。硬めは耐久性が高く、重いデッドでも伸びにくいです。柔らかめはバーに馴染みやすく、素早く巻けます。パッドは厚いほど手のひらが守られ、薄いほどバーの感覚がつかみやすいです。手の皮が弱い人や高頻度に引く人は厚め、細かいフォームを詰めたい人は薄めが向きます。バンド幅は広いほど安定し、狭いほど可動が出ます。自分の種目構成と頻度でバランスを取りましょう。
用途別の目安と買い増しのタイミング
減量期や高回数期は手のひらが敏感になりやすく、厚めパッドが安心です。重量更新期は硬めラバーが頼れます。週4回以上のプル系がある人は練習用と大会前用を分けると寿命を伸ばせます。汗が多い人は替えを持つだけで臭いと劣化の対策になります。バンドのベルクロが甘くなった、ラバー端が裂け始めた、パッドに穴が見える、のいずれかが来たら買い替え候補です。
注意: サイズはメーカー横断で同名でも実寸差があります。既存モデルのSが合うからといって、他社のSも同じとは限りません。必ず装着位置と余りで判断しましょう。
手順ステップ
1) 手のひら長と手首周りを測る。
2) バンドを一段強めに締め装着。
3) パッド下端が掌中央やや下か確認。
4) バーに軽く巻いて指可動を確認。
5) ラバー端の処理と縫製を確認。
Q&AミニFAQ
Q: 手首が痛いのはサイズ違い?
A: バンド位置が骨に乗っていることも多いです。1cmほど手のひら側へ寄せると痛みが減ります。
Q: 初めてはどの硬さ?
A: 迷うなら中硬度を推奨します。巻きやすさと耐久のバランスが良いです。
装着と巻き方の基本、現場で崩れない手順

使い方はシンプルですが、順番が崩れると一気に使いにくくなります。足元に置いたまま片手で巻こうとしても安定しません。装着→位置合わせ→巻き方向の固定の三段だけ守れば、どの種目でも再現性が上がります。初動が速くなると集中が切れません。動作中の緩みも減ります。
手首に巻く位置を一定にする
バンドは手首の中央よりわずかに手のひら側に寄せます。骨の出っ張りに乗せると痛みやすく、締め込みが弱くなります。ベルクロは「余りが2〜3横指」程度を目安にします。装着したら掌を開閉して、パッドが指の付け根のしわに沿うかを確かめます。ここで位置を決めると巻き直しが減ります。汗が多い日は薄いリストバンドを下に挟むと快適です。
バーへの巻き方向を固定する
右手は時計回り、左手は反時計回りなど、自分のルールを決めます。毎回方向が変わると巻き量が安定せず、引き始めでズレます。バーにタブを当てて一周未満で噛ませ、手首を返してテンションをかけます。ダンベルはハンドルの中心から少し外して、重心に対して面が寝ないようにします。方向とテンションが固定されれば、重さが上がっても感覚は崩れません。
巻いた後の確認ポイント
巻いたら肩をすくめず、肘を軽く張ったまま軽く引きます。タブが滑るなら巻き量が足りません。逆にラバーが重なりすぎて指が動かないなら、一巻き分を減らします。親指はバーに添えるか、そっと巻き込む程度にします。握り込みすぎると前腕が先に疲れます。引き始めで肩甲骨が下がるか、腰が反っていないかも合わせてチェックします。
メリット
・握力の先行疲労を抑えられる。
・バーの滑りに強くなる。
・背中へ負荷を乗せやすい。
デメリット
・握力の露出機会が減る。
・巻きに時間がかかることがある。
・不適切な位置だと手首が当たる。
ミニチェックリスト
・バンド位置は手のひら寄りか。
・巻き方向は毎回一定か。
・タブの重なりは一周未満か。
・親指の力みは取れているか。
・引き始めで肩甲骨は下がるか。
よくある失敗と回避策
・バンドを骨に乗せる→1cm手のひら側へ。
・巻き過ぎで痺れる→半巻き減らす。
・方向が毎回違う→ルールをメモ。
・汗で滑る→粉末チョークかタオルで乾拭き。
種目別の活用術と当てどころの最適化
同じ道具でも、当てどころと巻き量で効き方が変わります。プル系ではタブの面で引きを受け、プレス系では握りを補助する程度に留めます。可動域の端でズレるなら、巻き直しではなく当てどころを修正しましょう。ここでは主要種目での使い方を具体に落とします。感覚が定まるまでメモを取り、次回のセットで再現します。
ラットプルダウンと懸垂での面の作り方
バーの上にタブを置き、手首内側へ返しながらテンションをかけます。タブの面がバー上で斜めに寝ないよう、手のひら中央に面の中心が来るよう合わせます。懸垂ではグリップの角度に合わせ、体の前後でテンションが抜けない位置を探します。最後の数レップで指の力みが出るなら、巻き量を半巻きだけ増やすか、肩甲骨の下制を先に意識して引き込みます。
デッドリフトとローイングでの噛ませ方
デッドはハンドルにタブを当て、半周弱で噛ませてから手首を返します。面が縦にずれないよう、親指は軽く添えるだけにします。ローイングは引き切りでタブが浮きやすいので、当てどころをハンドルのやや掌根寄りにセットし、戻しで面が剥がれないようにします。チーティングで引くと面が負けます。胸を張り、肩を下げてから肘を引きましょう。
ダンベル種目での重心コントロール
ダンベルはバー径が細く、転がりやすいです。タブをハンドル中心より5mmほど外側にずらすと、面が寝にくくなります。片手種目は左右で巻き方向を意図的に変えると、可動域の端でテンションが抜けにくくなります。ワンハンドローではベンチへ体幹を固定し、当てどころを掌根から指二本分下に置くと安定します。引き切りで面が浮くなら、巻き量をわずかに増やしましょう。
| 種目 | 当てどころ | 巻き量 | 注意 |
|---|---|---|---|
| ラットプル | 掌中央 | 半周未満 | 下制→肘の順 |
| 懸垂 | バー角度に合わせる | やや多め | 体前後で抜かない |
| デッド | 掌根やや上 | 半周弱 | 握り込み過多を避ける |
| ダンベルロー | 中心から外へ5mm | 半周未満 | 面が寝ない角度 |
| シーテッドロー | 掌中央 | 半周 | 戻しで面を保つ |
ミニ用語集
・当てどころ: タブを手のひらへ置く位置。
・半周未満: タブを一周させず噛ませる巻き量。
・面: タブの平らな部分。
・下制: 肩甲骨を下へ下げる動き。
・掌根: 手のひらの根元、厚い部分。
ベンチマーク早見
・プル系は面を作る、プレス系は補助に留める。
・最後の3レップで指力が出たら半巻き増やす。
・面が浮いたら当てどころを5mm調整。
手入れ・衛生・交換時期の見極め

グリップは汗と摩擦に晒され続けます。放置すると匂い、ベタつき、ベルクロの弱りに直結します。短時間のルーティンを習慣にすれば清潔さと寿命を両立できます。道具が清潔だとセット間の集中も途切れません。手入れは難しくありません。終わった直後の数十秒で済みます。
日々のお手入れをルーチン化する
使用後はタオルでラバーとパッドの汗を拭き、ベルクロのホコリを指で軽く払います。帰宅したら風通しの良い場所に広げ、直射日光は避けます。週に一度、薄めた中性洗剤を布に含ませて表面を拭き、乾拭きで仕上げます。強い溶剤は接着を弱める恐れがあるため避けます。匂いが気になる日は重曹スプレーを軽く使い、必ず完全乾燥させます。
痛み・滑り・匂いは交換サイン
パッドが薄くなり掌の一点が痛む、ラバー端が裂け始める、ベルクロの噛みが甘くなる、強い匂いが取れない、いずれも交換の目安です。重い日ほど消耗は早いです。練習量が多い人は二本体制にすると、乾燥サイクルを保てます。パッドに小さな穴が見えたら先延ばしにせず、早めの交換で手の保護を優先しましょう。
保管と持ち運びのベストプラクティス
ジムバッグの底に押し込むと、ラバーが曲がって面が寝てしまいます。薄いケースに平置きで入れるだけで形が保てます。帰宅後はフタを開けて乾燥させます。夏場や湿気が多い日は乾燥剤をケースに入れると安心です。長期の旅行前には表面を拭き、完全に乾かしてから収納します。匂い移りを防ぐため、シューズや濡れた衣類と分けて持ち運びます。
- 使用直後に汗拭き→風通しへ。
- 週一で中性洗剤の拭き取り。
- ベルクロのゴミを手で払う。
- ケースで平置きして持ち運ぶ。
- 完全乾燥後に収納する。
- 消臭は重曹スプレーを薄く。
- 穴・裂け目は早めに交換。
練習後にタオルで拭くだけに変えたら、匂いがほぼ消えました。ベルクロの噛みも長持ちし、交換サイクルが一段伸びました。
ミニ統計
・「使用後拭き+週一拭き」運用で匂いトラブルは体感で半減。
・ケース平置きはラバーの反りを抑え、面の寝を予防。
・二本体制は乾燥時間の確保に有効。
トラブルを減らすフォーム調整と予防策
違和感の多くは道具より動きの問題です。手首痛、前腕の張り過ぎ、肩のすくみ、いずれもフォームの微修正で大きく改善します。装着位置と肩甲骨の動きをセットで見直せば、同じ重さでも負荷の乗り方が変わります。ここではよくある悩みを手順で解消します。
手首痛は位置と角度で減らす
バンドが骨に乗ると痛みやすく、巻き直しが増えます。装着は手のひら寄りに1cm移動し、手首を軽く背屈させてから巻くと圧が分散します。引き始めで手首が折れる人は、当てどころを掌根寄りに置き、ラバーの噛みを半巻き増やします。ベルトを締め過ぎると血流が落ち、痺れの原因になります。余りは2〜3横指に揃えましょう。
前腕の張り過ぎは「握らない」意識で解決
パワーグリップは握る力を補助する道具ではなく、面で荷重を受ける道具です。親指で強く握り込むと前腕に先に疲労が来ます。バーへは添える程度にし、手根で面を押し当てて引きます。最後の数レップで握りが強くなる人は、巻き量を半巻き増やすか、可動域の中盤で一度テンションを作り直すと安定します。フォーム動画を撮って確認すると改善が早まります。
肩がすくむなら下制→寄せの順に直す
引き始めで肩が上がるとターゲットから負荷が外れます。まず肩甲骨を下へ下げ、その後寄せる順で動かします。ラットプルではスタートで胸を上げ、バーを引く前に下制を作ります。ローイングは引きの中盤で寄せに切り替えます。タブの面が浮いたら、当てどころを掌中央へ戻すか、巻き量を微調整します。テンポが速すぎると面が負けるため、最初の2レップは丁寧に動きましょう。
Q&AミニFAQ
Q: 手の豆が痛む。
A: パッドが薄いか当てどころが前過ぎです。掌根寄りへ5mm下げると痛みが減ります。
Q: デッドの最下点で滑る。
A: 噛みが浅い可能性。半巻き増やすか、ハンドル中央へ当て直します。
手順ステップ
1) バンドを手のひら寄りに装着。
2) 当てどころを掌中央へセット。
3) 巻き方向を固定し半周未満で噛ませる。
4) 下制→寄せ→肘の順で引く。
5) 違和感が出たら巻き量を半巻き調整。
メリット
・違和感の原因を分解して直せる。
・再現性が高まり重量の伸びに直結。
・ケガ予防に寄与する。
デメリット
・撮影や確認の手間が増える。
・短期的には重量が落ちることがある。
・修正中はセット数を絞る必要がある。
ゴールドジム パワーグリップを計画に組み込む
道具は目的のためにあります。握力の育成を止めず、背中へ十分なボリュームを積むために、週単位の配分を決めましょう。パワーグリップは使う日と使わない日を作ると、フォームも握力も並行して伸びます。RPEやレップレンジ、疲労管理を合わせれば、停滞の回避に役立ちます。
週内の使い分けテンプレート
背中が二回ある週なら、重い日ではグリップを使い、軽い日は素手やストラップに切り替えます。重い日はフォーム優先でプル系を積み、軽い日は握り・前腕の露出を増やします。懸垂は素手、ラットプルはグリップなど、同日に混在させるのも有効です。疲労が溜まる週はレップレンジを上げ、テンポをコントロールして神経負荷を下げます。
握力育成と両立する補助メニュー
ハブリフトやピンチ、ファーマーズなどを週の後半に入れます。背中の主練習を終えた後に軽いボリュームで行い、前腕の張りが次回へ残らない程度にとどめます。オーバーハンドのデッドを追加して、素手の限界を安全に刺激するのも良いです。前腕のストレッチとマッサージをセット後に入れると、張りの回復が速くなります。
重量・ボリュームの決め方と記録
RPEを軸にし、プル系はRPE8前後を基準にします。グリップ使用日はレップを稼ぎ、素手の日は重量帯を上げます。面が安定していれば、同じRPEでも扱える重量が上がるはずです。記録は重量だけでなく、巻き方向、当てどころ、巻き量、汗の量まで残すと再現性が高まります。動画のサムネにメモを書き込むと、見返しが簡単です。
- 重い日はグリップ、軽い日は素手で握力露出。
- 補助でピンチやハブを軽く入れる。
- RPE8前後を基準にレップで稼ぐ。
- 記録に巻き方向・当て位置を必ず残す。
- 張りが残る週はテンポとレップで調整。
- 懸垂は素手の頻度を一定に保つ。
- 大会期は新品を慣らしつつ使う。
ミニ統計
・「重い日だけ使用」設計で握力の停滞感は体感で減る傾向。
・巻き方向と当てどころの記録習慣は再現性を高める。
・素手の懸垂を維持すると前腕の張りが整う。
ミニ用語集
・RPE: 主観的運動強度の指標。
・ピンチ: 指と親指で板状の物をつまむ動作。
・ハブリフト: 円盤のハブをつまんで持ち上げる。
・テンポ: 上げ下げの速度指定。
・ボリューム: 総反復数×セット数×重量の総量。
まとめ
パワーグリップは背中の練習を前へ進めるための道具です。サイズはバンドの余りとパッド位置で決め、装着は手のひら寄りに固定します。巻き方向を左右で決めて半周未満で噛ませ、当てどころは掌中央を基準に微調整します。
手入れは「使用後の拭き上げ+週一拭き」で十分に清潔が保てます。ベルクロの噛みが甘い、ラバー端の裂け、パッドの穴は交換サインです。
週の中で使う日と使わない日を分ければ、握力の育成と背中のボリュームを両立できます。記録に巻き方向と当てどころを書き残し、再現性を上げましょう。今日の一手が次回の一歩に直結します。道具を味方にして、狙った部位に重さを届けてください。


