週4という頻度は多くも少なくもない絶妙な帯域です。だからこそ強度の波形と種目数の最適化が肝になります。最後にそのまま使えるテンプレと、伸び続ける微調整手順まで載せました。
- 全身法は種目を絞り頻度で技術を磨く。
- 週4は刺激と回復のバランスが取りやすい。
- 上半身押す引く下半身体幹の配分を固定。
- 強度は波形で管理し翌日の質を守る。
- 主観RPEと客観ログを同時に記録する。
- 食事と睡眠は量よりもタイミングをそろえる。
- テンプレから始め微差で進化させていく。
筋トレの全身法で週4を回す|実例で理解
最初に決めるのは「何を良くしたいか」です。筋肥大、筋力、技術、体脂肪管理のうち、主目的を1つにし副目的を1つに絞ります。次に配分を固定します。上半身は押すと引く、下半身はヒンジ(股関節)とスクワット(膝主導)、さらに体幹を合わせ計5ブロック。週4では各ブロックを1日1〜2種目、合計5〜7種目に抑えると集中が保てます。
主目的の選定とKPIの決め方
筋肥大なら週当たりの有効セット数、筋力ならトップセット重量、技術ならフォーム再現率、体脂肪なら摂取カロリーと体重推移をKPIにします。KPIが1つ決まると、負荷やボリュームの迷いが消え、トレーニング後の評価が具体になります。数値は「前週比」で管理し、上下10%内で推移すれば良好です。
配分の固定で意思決定を減らす
全身法の弱点は種目の誘惑が多いことです。配分を固定すると、日々の選択が自動化され実行力が上がります。押す/引く/ヒンジ/スクワット/体幹の順で並べ、同ブロックが連続しないように組むと神経的な疲労が分散します。上半身の小筋群は大筋群に付随させると過負荷を避けられます。
1日のボリュームとセット設計
主目的が筋肥大なら各ブロック2〜3セット、筋力なら主種目は3〜5セット、技術なら軽重量で3セット程度が目安です。1日の合計は10〜15セットに抑えると翌日に疲労を残しにくく、週4でも質を維持しやすくなります。セット間の休息は種目の性質に合わせて変えます。
RPEと速度感の併用
自覚的運動強度(RPE)は主観の指標ですが、バーベルの上げ速度という体感も重視します。重く感じてもバーが鋭く動けば継続、重さが軽くても速度が鈍ければ休息か負荷の微調整を検討します。数字と感覚の二軸で判断すると過剰な我慢を避けられます。
メニューは「捨てる勇気」から始まる
やることを増やすより、やらないことを決める方が全身法は回りやすいです。二頭三頭の単関節種目を減らし、複合種目で全身を動かす設計に寄せます。仕上げに余力があれば追加、なければ翌日に回します。継続の原資は余白です。
注意:始めの2週は「楽すぎる」くらいでOKです。週4は累積で効いてきます。初速を上げすぎると3週目で失速します。
- 主目的と副目的を1つずつ決める。
- 押す/引く/ヒンジ/スクワット/体幹を並べる。
- 1日10〜15セットに収める。
- RPEと速度感で負荷を微調整する。
- 2週は助走、3週目から伸ばす。
ミニ統計(導入2週で見る指標)
・体重/ウエストの推移(週平均)
・主種目のトップセット重量と主観のズレ
・睡眠時間と日中眠気スコア
分割より全身法が週4に向く理由と例外

週4で最大化したいのは「刺激の頻度×回復の質」です。全身法は1回あたりのボリュームを抑えやすく、各部位を48〜72時間で繰り返し刺激できます。これにより動作の学習が早まり、フォームが安定します。一方で、肥大を最優先し特定部位を厚く攻めたい時は分割に分があります。この章では向き不向きと、例外の扱い方を整理します。
神経系の鮮度が保てる
1日に同じ部位へ大量のセットを積むと、後半で神経的な鮮度が落ちフォームが曖昧になります。全身法は1部位2〜3セットに抑えやすく、毎回の1セット目の質が高く出ます。週4なら学習機会が多く、プレスやヒンジの軌道が週内で整っていきます。質の積み重ねが早期の伸びにつながります。
疲労分散と関節の保全
上半身と下半身を交互に配置することで、局所の炎症や腱の張りが落ち着く時間を確保できます。同一部位高ボリュームの翌日は軽い刺激で血流を促し、関節内の不快感を残さない設計が可能です。特に肩や肘の違和感が出やすい人に全身法は相性が良いです。
例外:部位特化を挿し込む判断
脚のサイズを短期で伸ばしたい、ベンチのピークを作りたいなど、目的が明確なら週4全身法のうち1日だけ部位特化を入れるのは有効です。その際は翌日を軽めにし、残り2日は通常配分に戻します。例外は「1日だけ」「上げ幅は小さく」を徹底します。
メリット/デメリット比較
全身法:頻度高く学習が速い。疲労が分散しやすい。
弱点:1回の満足感が薄い、種目の誘惑が多い。
分割法:部位を厚く攻めやすい。パンプを得やすい。
弱点:頻度が下がり技術の維持が難しい。
Q:初心者はどちらが良いですか。
A:週4なら全身法が無難です。フォーム学習が速く、疲労管理が容易です。
Q:脚を優先したい。
A:1日だけ脚特化を入れ、翌日は上半身中心の軽めにします。
Q:パンプ感が欲しい。
A:最後に短時間のメットコンやクラスター法を挿し、時間で区切ります。
ベンチマーク早見
・1セット目の速度が落ちない。
・関節の違和感が翌朝に残らない。
・週末の主観疲労が中程度で収まる。
週4サイクルの強度波形と疲労管理
週4は「強/中/強/軽」や「中/強/中/軽」など、波形で回復を織り込みます。目的により頂点の位置は変えますが、共通するのは翌日の質を守ることです。強度を上げる日ほど種目数を減らし、軽い日ほど技術や可動で整えます。心拍、睡眠、食欲といった生活指標も波形と合わせて観察します。
波形の基本パターン
筋力寄りは「強→軽→強→軽」、筋肥大寄りは「中→強→中→軽」、技術寄りは「中→軽→中→軽」が扱いやすいです。週の前半で山を作ると後半の仕事や学業に影響しにくく、心理的にも手綱を握りやすくなります。週替わりで山の位置を少し動かすと停滞を避けられます。
RPEとレップインリザーブの運用
重さの指標としてRPEとレップインリザーブ(残余回数)を使います。強の日はRPE8〜9(残り1〜2回)、中はRPE7〜8、軽はRPE6前後が目安です。最後の1セットだけ強度を上げて刺激を刻む「トップセット+バックオフ」は週4と相性が良いです。
疲労の早期サインと対処
朝の起床困難、バーの初動の鈍さ、食欲の低下、いつもの重量が重く感じるなどは早期サインです。軽日に可動と技術へ切り替え、睡眠を増やします。2日連続で鈍さが出るときはセット数を3割減らし、次週で様子を見ると長期の停滞を避けられます。
- 週の山を1つに絞り位置を固定する。
- 強い日は種目数を減らし休息を長く。
- 軽い日は技術と可動で整える。
- RPEと残余回数で負荷を決める。
- 早期サインは3割削って回復を優先。
チェックリスト(毎晩1分)
- 眠気スコア(0〜10)
- 食欲の有無と就寝前の空腹感
- 朝の脈拍と体温の体感
- バーの初動速度の印象
- 関節の違和感の有無
ミニ用語集
RPE:自覚的強度。8は余力2回程度。
残余回数:限界まで残せる回数の目安。
バックオフ:トップ後に重量を落として行う。
種目選定とフォーム基準:押す引く下半身体幹

全身法の核は種目の質です。安全に重さを伸ばしやすい複合種目を中心に、器具や環境に合わせて入れ替え可能な「同等種目」を準備します。ここではブロックごとに基準種目と代替案、フォームの合図をまとめ、ミニマムで迷わない土台を作ります。
押す(プレス系)の基準
ベンチプレスまたはダンベルベンチを軸にします。肩甲骨を軽く寄せ下げ、足で床を踏み胸骨を前へ向ける。肘の角度は45度前後、肩の前に負担が集まる感覚が出たら軌道を浅くします。代替はディップスやプッシュアップ+負荷。肩が敏感なら角度可変のマシンも有効です。
引く(ロウ/プル系)の基準
ベントオーバーロウまたはワンハンドロウ。骨盤中立、胸骨を前へ送り、引いた肘を腰へ向ける。腰が不安な人はチェストサポートロウに変更。プルアップ系は週内で1〜2日に分散し、可動重視で行います。握力が先に尽きるならストラップを検討します。
下半身(スクワット/ヒンジ)の基準
スクワットは深さよりも安定を優先します。しゃがむ前に息を吸い腹圧を作り、膝とつま先を同じ方向へ。ヒンジはデッドリフトかルーマニアン。背中を丸めず、股関節を後ろへ引き、ハムに伸張感を感じてから押し返します。シューズやリフトは個人差に合わせて調整します。
| ブロック | 基準種目 | 代替案 | 合図 |
|---|---|---|---|
| 押す | ベンチ/DBベンチ | ディップス/マシン | 胸骨前へ・肘45° |
| 引く | ロウ/プルアップ | CSロウ/ラット | 肘を腰へ・胸を保つ |
| スクワット | HB/フロント | ゴブレット/ボックス | 腹圧・膝つま先同方向 |
| ヒンジ | DL/RDL | ヒップスラスト | 股関節を後ろへ引く |
| 体幹 | プランク系 | Pallof/デッドバグ | 肋骨を締める |
よくある失敗と回避策
失敗:押しで肘が開き肩が詰まる。
回避:肘45度、足で床を踏み胸骨を前へ。
失敗:ロウで腰が丸まる。
回避:胸を保ち、重量を下げて可動を優先。
失敗:デッドで背中が抜ける。
回避:バーをすねに寄せ、腹圧を先に作る。
ワンハンドロウへ切り替えたら腰の緊張が減り、翌週にプルアップの回数が伸びました。代替案は妥協ではなく、最短距離への選択だと感じました。
食事と睡眠と回復戦略:伸び続ける仕組み
週4を長く続けるには、トレーニング外の設計が欠かせません。食事は量だけでなくタイミング、睡眠は時間だけでなく一貫性、回復は能動的に整える工夫が大切です。ここでは最小限で効果を実感しやすい方法をまとめ、行動のハードルを下げます。
食事のタイミング戦略
起床後にたんぱく質、トレ前後に炭水化物を厚く配分します。減量期は総量を抑えつつ、トレ前後だけはエネルギーを確保。増量期は1日の総量を増やし、脂質は睡眠の質を見ながら調整します。水分と電解質も忘れずに。小さな安定が翌日の質を守ります。
睡眠の一貫性で回復を加速
毎日ほぼ同じ時刻に寝起きするだけで回復効率は上がります。就寝90分前に光を落とし、ぬるめの入浴、カフェインは午後早めまで。ベッドは「寝るだけ」にして、スマホは遠ざけます。眠れない日は焦らず、呼吸に注意を向けて体を重く感じるのを待ちます。
アクティブリカバリーの取り入れ方
軽い散歩、関節の小さな可動運動、ストレッチよりも関節の滑走感を意識した動きが有効です。トレのない日は10〜20分で十分。筋肉痛が強い部位は温冷を使い分け、翌日のウォームアップで血流を作ります。休み方も設計に含めると、停滞を避けられます。
- 起床直後に水とたんぱく質を入れる。
- トレ前後は炭水化物を優先する。
- 同じ時刻に寝起きして一貫性を守る。
- 就寝前の光を減らしスマホを遠ざける。
- 休みの日も短い散歩で血流を作る。
- 温冷を使い分け筋肉痛を軽減する。
- 翌日の質で休息の良し悪しを判断する。
注意:急な食事制限や夜更かしは、フォームを乱す最短ルートです。週4の設計はライフスタイルとセットで考えましょう。
手順ステップ(就寝前60分)
- 照明を落とす/画面を遠ざける。
- ぬるめの入浴で体温の波を作る。
- 軽い関節運動と深い呼吸を行う。
- 翌日のメニューを1行だけ確認。
- ベッドに入り、眠れなくても横になる。
メニュー具体例:週4×全身法テンプレと進化手順
ここではそのまま使えるテンプレと、目的別の微調整を示します。まずはテンプレを4週回し、ログを基に1つずつ変えていきます。変えるのは重量・セット数・種目の順。1回に変える要素は1つだけです。これが最短で伸び続けるコツです。
基本テンプレ(中→強→中→軽)
週4の代表波形です。中日はフォームとボリューム、強日はトップセット、軽日は技術と可動に寄せます。各日の最後に体幹かメットコンを5〜8分だけ入れ、呼吸と姿勢の質を高めます。以下の表は一例で、器具に合わせて同等種目に入れ替え可能です。
| 日 | 主軸 | 種目例 | 目安 |
|---|---|---|---|
| Day1 | 中 | ベンチ/ロウ/RDL/スクワット軽/体幹 | 各2〜3セット |
| Day2 | 強 | スクワット/ベンチ/プルアップ/体幹 | 主3〜5/他2セット |
| Day3 | 中 | デッド/プレス/CSロウ/ランジ/体幹 | 各2〜3セット |
| Day4 | 軽 | 可動/テクドリル/プッシュアップ/ロー/反復 | 軽強度で短時間 |
筋肥大に寄せる調整
各ブロックの有効セットを週当たり10〜16に向けて増やします。トップセットはRPE8前後で止め、バックオフを追加。軽日のテク枠にパンプ狙いの短時間サーキットを入れ、時間で切ります。食事はトレ前後の炭水化物を厚くし、睡眠を確保します。
筋力に寄せる調整
主種目にクラスターやウェーブローディングを導入し、1回の質を高く保ちます。中日はフォームの再現性を重視し、軽日は可動と技術だけに絞ります。アクセサリは最小限、合計セットを減らしても良いので神経の鮮度を守ります。
Q&AミニFAQ
Q:時間が60分しかありません。
A:主種目を先に終え、残りをサーキットでまとめ、体幹は翌日に回します。
Q:器具が少ないです。
A:ダンベルと自重でも十分です。プレス/ロウ/スクワット/ヒンジ/体幹の枠を保ちます。
Q:停滞しました。
A:山の位置を前半へ寄せ、軽日に技術だけを丁寧に。食事と睡眠を1週間だけ厳密に整えます。
ベンチマーク早見(4週で確認)
・トップセット重量の前週比+2.5〜5kg内
・1セット目の速度の主観が落ちていない
・体重/ウエストが目的通りに推移している
まとめ
全身法の週4メニューは、配分を固定し強度を波形で管理すれば、少ない選択で質を積み上げられます。押す/引く/ヒンジ/スクワット/体幹の5枠を守り、1日10〜15セットのミニマムで回す。強い日は種目を絞り、軽い日は技術と可動で整える。
食事はトレ前後のタイミングを最優先、睡眠は一貫性で底上げ、回復は短い散歩と関節運動で能動的に。ログはKPIを1つに絞り、前週比で見る。テンプレを4週回し、変える要素は1つだけ。迷いが減れば継続が増え、継続が増えれば伸び続けます。今日から「捨てる勇気」で始め、明日も淡々と積み重ねていきましょう。


