本記事はデッドリフトで手が痛いと感じる場面をタイプ別に整理し、握り方やグリップ選択、テープとチョーク、器具差への対処、プログラムとケアの手順までを一つの導線にまとめます。痛みを恐れて負荷を避けるのではなく、痛みを小さくしながら練習を積み重ねるための実務的な判断軸を用意します。
- 皮膚と摩擦の問題を特定し、ケア線を引く
- 握り方と道具を選び、再現性を高める
- 器具差と環境差を記録し、誤差を減らす
- 週当たりの総量と強度の役割を分ける
- テスト日の安全と成功の保存を習慣化
デッドリフトで手が痛い原因を見極める|評価指標で整理
同じ痛みでも発生源は違います。まずは皮膚、握力、神経・腱、疲労の四つに分け、どのタイプが主役かを見極めます。
主役が分かれば対策は絞れ、無駄な我慢も減ります。ここでは原因の輪郭を具体例で描きます。
皮膚の摩擦と圧迫が主役のケース
ローレットの角が強いバーや汗で滑る環境では、皮膚への剪断力が増えます。タコが未成熟だと厚さが偏り、めくれやすく痛みが残ります。
可動域の底でバーが転がると摩擦が集中するため、足圧と骨盤の角度を整え、バーを身体に寄せたまま上下する意識が有効です。テープやチョークの選択も早めに検討します。
握力不足とバーの回転が引き起こす痛み
握力が限界に近いと、指の付け根でバーが転がり皮膚が引っ張られます。ダブルオーバーで限界が早い人はオルタネイトやフックの導入で軸を安定させます。
バーの径が太いと指の巻きが浅くなり、摩擦が増えます。同じ重量でも器具が変わると痛みの質が変わるため、ログに器具タグを残しましょう。
親指周辺の筋腱ストレスが主役のケース
フックグリップで親指に過剰な圧がかかると、痛みや痺れに似た違和感が出ます。テープで角を丸め、引きはじめの肘の向きを整えると圧が分散します。
痛みが鋭く持続する場合は、期間を空けてから再開し、テンポを遅くして感覚を取り戻します。急な再負荷は避けます。
神経の圧迫やしびれを疑うサイン
皮膚表面というより、深部のジンとした痺れや冷感が続くときは神経の圧迫が関与している可能性があります。バー位置や把持の角度で症状が変わるなら、姿勢の見直しと休止が必要です。
痛みの場所を言語化し、長引く場合は専門家の評価を受けます。無理は積み上げを壊します。
疲労蓄積と回復不足が背景にあるケース
同じ重量で急に痛みが増すとき、睡眠や栄養の乱れが背景にあります。週のボリュームが増えた直後や、仕事で握る作業が増えた週は要注意です。
デロードやテンポの導入で刺激の質を保ちつつ、総量を一時的に落とします。短い休みが長い継続を守ります。
注意
発赤や熱感、強い腫れを伴う痛みは練習を中止し、状態が落ち着くまで負荷をかけないでください。痛み止めで隠して続ける判断は推奨しません。
ミニ統計
- チョーク常用者は滑り由来の痛み報告が少ない傾向
- バー径28mmと29mmで握力限界の主観差が出やすい
- 週当たりの引く回数が多いほど皮膚適応は速い
比較
| タイプ | 特徴 | 初手の対策 |
|---|---|---|
| 皮膚摩擦 | 表面のヒリつき | テープとチョークで剪断を分散 |
| 握力不足 | 指付け根の引っ張り | グリップ選択とバー径の確認 |
| 筋腱ストレス | 親指奥の刺す痛み | テーピングと肘向きの調整 |
| 神経圧迫 | 痺れや冷感 | 休止と姿勢変更を優先 |
握り方とグリップ選択で痛みを減らす

把持は刺激の入口です。ここが整うと、同じ重量でも痛みは小さくなります。ダブルオーバー、オルタネイト、フック、ストラップの順に選択肢を検討し、状況で使い分けます。握りは場面対応力が大切です。
ダブルオーバーとオルタネイトの選び方
ダブルオーバーは左右対称で学習に向き、皮膚の適応を進めやすい利点があります。高重量で転がるならオルタネイトに切り替え、バーの回転を止めます。
オルタネイトでは肩の捻れを最小化するため、広背筋に軽い張りを作り、肘の向きを揃えます。左右の入れ替えは週ごとに行い、偏りを避けます。
フックグリップ導入とテーピングのコツ
フックは親指を指でロックし、バーの回転を抑えます。親指の角にテープを巻き、角を丸くすると痛みが減ります。
初期は軽中重量でテンポを遅くして練習し、神経の慣れを待ちます。親指の位置が浅いと痛みが強くなるため、指腹で押し込む感覚を育てます。
ストラップの使いどころと注意点
高ボリュームの日や握力以外を狙う補助ではストラップが有効です。目的は動作学習や背面の刺激であり、メインの最大挙上では使いすぎない運用が現実的です。
巻くタイミングは足圧と背中の緊張を作ってから。巻きに集中して姿勢が崩れると、かえって痛みの原因になります。
手順ステップ:オルタネイトのセット
- 足圧とバー距離を決める
- 上から握る手をバーに密着
- 下から握る手で回転を止める
- 肘の向きを揃え肩を下げる
- 吸気で胴を固めてから引く
ミニ用語集
ローレット…バーの刻み目。滑り止め。
テーピング…皮膚保護と圧分散の補助。
オルタネイト…順手逆手の混合把持。
フック…親指を指で固定する把持。
ストラップ…手首でバーを補助する帯。
よくある失敗と回避策
巻き急ぎ→姿勢が崩れる。セットの順番を固定。
親指の角が痛い→テープで角を丸め浅握りを避ける。
左右固定→オルタネイトは週ごとに入れ替える。
皮膚とタコの育て方とケアの基本
皮膚は環境に適応する臓器です。適度な刺激と休息でタコは均一に育ち、摩擦や圧迫に強くなります。保湿と保護を両輪にして、削りすぎも放置もしない中庸を狙います。痛みの少ない習慣を作りましょう。
タコを育てるか削るかの基準
タコは均一な薄い層が理想です。盛り上がって角が立つと引っ掛かり、めくれの原因になります。入浴後の柔らかい時間に軽く整え、削りすぎは避けます。
練習前に硬く乾いた角がある日はテープで保護し、練習後は保湿で柔らかさを戻します。均一さが痛みを減らします。
保湿とテープの使い分け
保湿は皮膚の弾力を保ち、剪断に耐える力を与えます。練習直前はベタつきが滑りを招くため、数時間前に行い、直前は乾いた状態を基本にします。
テープは局所の角を丸める目的で使い、巻きすぎて握りが浅くならないよう幅と張力を調整します。
練習後のケアルーチンを固定化する
手洗い後に清潔なタオルで水分を拭き取り、軽い保湿を行います。傷がある日は消毒と保護を優先し、翌日の練習はテンポ種目に切り替えます。
就寝前にも短い保湿を挟むと、翌日のヒリつきが減ります。小さなルーチンが継続の快適さを変えます。
ミニチェックリスト
- 入浴後に角の高さを確認したか
- 練習直前の保湿を避けたか
- テープで角を丸めたか
- 終わったら洗浄と保湿をしたか
- 痛む日はテンポ種目へ切り替えたか
「削りすぎは敵、放置もしない。均一な薄さが最高の保護具。」
Q&AミニFAQ
Q. タコをゼロにしたいです。
A. 完全に無くすと摩擦に弱くなります。均一で薄い層を保つ発想に切り替えましょう。
Q. 保湿は何を使えば良い?
A. 使用感が軽くベタつきにくいもの。練習直前は避け、就寝前に行うと楽です。
Q. テープは毎回必要?
A. 角が立つ日や高ボリュームの日に限定。巻きすぎは握りの浅さを招きます。
器具と環境の差が痛みに与える影響を理解する

同じフォームでも器具が変わると感触は変わります。バー径、ローレット、プレートの厚み、床材、室温や湿度までが皮膚と握力に関わります。記録して再現性を高めましょう。
バー径とローレットの違いを記録する
バー径28mmは握りやすく、29mmはわずかに太く感じます。ローレットが強いバーは滑りにくい反面、皮膚への圧が増えます。
ジムを跨ぐ人は「28/ハード」「29/ミディアム」のようにタグで管理し、同じ条件で比較できる状態を作ります。
プレート厚みと床材でスタートが変わる
薄いプレートはバーのしなりが出やすく、厚いプレートはスタートが重く感じます。床材が硬いと反発が少なく、柔らかいと沈みます。
指の角度や足圧が変わるので、環境が変わる日はテンポを入れ、再現性を優先します。慣らしのセットを増やす判断が安全です。
チョーク、リキッド、なしの使い分け
チョークは汗を吸い、摩擦を高めます。粉は散りやすいので環境に合わせて量を調整します。リキッドは手や器具が白くなりにくく、ジム規約に適します。
何も使わない日は、軽中重量と学習目的に絞り、皮膚の角が立っていないかを事前に確認します。
器具差早見表
| 項目 | 選択肢 | 感触の傾向 | 対処 |
|---|---|---|---|
| バー径 | 28/29mm | 太いほど巻きが浅い | 握り方の切替を準備 |
| ローレット | ソフト/ハード | 強いほど皮膚刺激増 | テープと保湿で調整 |
| プレート | 薄/厚 | 厚いと初動が重い | ウォームアップを追加 |
| 床材 | 硬/柔 | 沈みは再現性低下 | 足圧の確認を徹底 |
| チョーク | 粉/液/無 | 摩擦と汚れのバランス | 規約と目的で選択 |
ベンチマーク早見
- 器具タグ…バー径/ローレット/床材を併記
- 慣らし…環境変更日はセットを1–2増
- 目的…学習日と高重量日を分けて記録
- チョーク…量と導入位置を固定化
- 比較…同条件の映像で前回比を確認
注意
規約で粉チョークが禁止の施設では、無理に使用せずリキッドやテープで代替してください。器具を汚す運用はトレーニング環境の信頼を損ねます。
プログラムと回復から痛みを遠ざける設計
痛みは設計のゆらぎで悪化します。週の頻度、強度の役割、総ボリューム、回復と栄養を一枚の紙に落とし、再現性と安全を優先した波を作ります。小さな工夫で積み上げが楽になります。
ボリューム管理は週セットの器から決める
主役セットは週6–10、補助は週6–8を目安にします。週3に分割するなら各日の役割をはっきり分け、握力に負担が集中しないよう配置します。
皮膚に違和感が出た週は総量を2–4割下げ、テンポやポーズで質を守ります。短い調整が長期の継続を支えます。
テンポ、可動域、把持の順で難しくする
痛みが気になる週は重量を盛るより、下げ3秒・底1秒・上げ1秒のテンポを導入します。可動域を一定に保ち、把持は目的に合わせて切り替えます。
テンポはフォームの学習を促し、皮膚の剪断を分散します。焦らず質を積みます。
回復と栄養で翌週の快適さを作る
起床時刻の固定と練習後の栄養が効きます。タンパク質は体重×1.6–2.2gを目安に、炭水化物は練習の前後に集中させます。
水分と電解質を欠かさず、睡眠が短い日はテンポ練習へ切り替えます。無理をしない判断が結果を守ります。
有序リスト:週2の運用例
- Day1 中強度×反復で学習と握力維持
- Day2 高強度×低回数で神経適応
- 補助は弱点1–2種目に限定
- 三週積んで一週2–4割軽く
- 痛みが出たらテンポへ切替
- 映像は各日2本までで整理
- 器具タグとRPEを併記する
ミニ統計
- デロード導入週は痛み報告が減りやすい
- 起床時刻固定で翌日の主観疲労が低下
- 練習直後の栄養で次回の集中が上がる傾向
手順ステップ:痛みが出た週の調整
- 主役セットを1–2削りテンポ導入
- 把持を変更し剪断方向を変える
- チョークやテープで保護を追加
- 睡眠と栄養を二日間だけ強化
- 四日後に軽中重量で再評価
テスト日と長期継続の運用で成果を守る
テスト日は気持ちが前に出ます。そこで安全の段取りを先に決め、成功体験を次につなげます。記録と振り返りが、痛みの再発を防ぐ地図になります。
ウォームアップとルーティンで再現する
階段状に重量を上げ、各段で握りと足圧、肘の向きを確認します。環境が違う日は慣らしセットを一つ足し、チョークの量を固定します。
最重セット前に動画の角度を揃え、成功の合言葉を短く決めます。再現できる準備が緊張を和らげます。
安全装備とセーフティで失敗を設計する
カラーでプレートを固定し、床の滑りとバーの転がりを確認します。スポッターがいない日は重量より再現を優先し、無理をしない線を事前に引きます。
失敗しても落下を避けられる配置にし、手の皮膚を守る準備を整えます。安全は次の練習回数を増やします。
記録と評価で次の一回を軽くする
重量、回数、RPE、器具タグ、把持、チョーク量、皮膚の状態を一行で記録します。痛みの位置と質も短く書き、翌週に参照します。
映像は良い動きの一本だけを保存し、合言葉をキャプションに残します。見返しが簡単だと継続が楽です。
無序リスト:テスト日の持ち物
- テープとリキッドチョーク
- 小タオルと除菌シート
- 薄手の保湿剤と絆創膏
- カラーと簡易セーフティの確認
- 三脚または固定できる支え
- 水分と電解質の補給用ボトル
- 合言葉を書いたメモ
ミニ用語集
器具タグ…環境差を記録する短い符号。
合言葉…動作の要点を一言で再現する言葉。
前回比…条件を揃えた上での比較指標。
慣らしセット…環境適応のための追加セット。
カラー…プレート固定具。安全の基本。
「成功の準備は安全の準備。保存した一本が、次回の不安を消してくれる。」
まとめ
デッドリフトで手が痛いとき、原因は皮膚、握力、筋腱、神経、疲労のどこにあるかで対策が変わります。握り方の使い分け、テーピングとチョーク、器具差の記録、ボリュームと回復の設計を一本の導線に重ねると、痛みは小さくなり、練習は積み上がります。
テスト日は安全の段取りを先に決め、成功の映像と一行ログを残します。今日の小さな準備が、来週の快適さと数字を静かに押し上げます。焦らず、再現性を味方にして継続しましょう。


