水泳用の陸トレメニューを決めよう|泳法別と期分けで結果を高める手順

breaststroke-swim-lesson 水泳のコツ
水泳の上達に陸トレを加える目的は、筋量を増やすだけでなく、水を捉える角度と体幹の張りを長く保ち、ラストまでストローク効率を落とさないことです。
そのためには「期分け」「泳法別の優先筋群」「週内の順序」「回復の仕組み」を一つの設計図でつなぎ、疲労の衝突を避けながら必要最小限の種目で成果を積み上げることが鍵になります。
現場で実行しやすい分量と手順に落とし込んだ具体例を、器具別の選択肢とともに提示します。

  • 期分けで目的を一つずつ前進させます
  • 泳法別に優先動作と筋群を切り替えます
  • 自重とチューブを基軸にジムを上乗せします
  • 週内の波と回復で干渉を小さくします
  • 痛みゼロを前提にメニューを更新します

水泳用の陸トレメニューを決めよう|疑問を解消

陸トレは「強くすること」ではなく「泳ぎを長く正確に保つこと」へ結びついて価値を持ちます。基礎期で土台を作り、最大筋力で柱を立て、パワー移行で速度へ変換し、維持/テーパーで削って仕上げる流れが基本です。泳ぐ練習量と重なるため、期別の狙いを短く言語化しておくほど、現場で迷いません。

基礎期の狙いと終わりの見極め

基礎期は可動域と安定化を整え、ヒンジ/スクワット/プッシュ/プルという四大動作で全身を均す段階です。腰背のニュートラルと肩甲帯の下制後傾を覚え、片脚系で骨盤を水平に保つ癖を入れます。目安は8〜12回×2〜3セットでRPE6〜7、翌日のスイムで重さが残らない状態です。片脚スクワットやチューブ外旋が雑にならず、呼吸が止まらないところまで来たら次期へ移行します。

最大筋力期で守る範囲

基礎が整ったら3〜5回×3〜5セットでRPE7〜8の範囲で最大筋力を狙います。ルーマニアンデッドリフトやフロントスクワット、チンアップで「重いけれど綺麗」を貫きます。フォームが僅かに崩れたら重量を止め、速度を保ったまま終えることが条件です。肩前面の張りや腰の反り感が出たら即座に量を引き、引き系6:押し系4程度の比率で肩を守ります。週2に抑えると泳ぎの質を維持しやすいです。

パワー移行期の設計

最大筋力で得た出力を「速く正確に使う」段階です。メディシンボールのスラムやローテーションスロー、軽中重量のジャンプスクワットやケーブルプレスを採用し、レップごとの速度を一定に保ちます。RPEは6〜7で切り上げ、疲れで失速する前に終えるのがコツです。水中の加速方向を意識し、最後に力を入れるのではなく、途中で速くする感覚を育てます。翌日のスプリントに重さを残さない配列が前提です。

維持とテーパーの考え方

レースが近づくほど量を削り、質を守ります。総セット数を20〜40%落とし、片脚ヒンジやチューブ外旋など「形を整える」種目だけを残します。1セットは短く、速度と呼吸を重視します。睡眠を優先し、強い刺激は48時間前までに済ませます。テーパーは魔法ではなく、積み上げた再現性を崩さないための安全策です。やり足りないくらいで終えることが、当日の動きの軽さにつながります。

週内の波と干渉を避けるコツ

週の強度の山谷を先に決め、強いスイムの前日は下半身の重い種目を避けます。水中が軽い日にジムを重ね、スプリント前日は肩への負荷を最小にします。強い日→軽い日→オフの三拍子で組むと、疲労が溜まりにくいです。RPEとレップ速度を記録し、翌週に配列を見直します。繁忙期には潔く量を引き、フォームを損なわない範囲を守ることが長期の近道です。

スイムの質が落ちるほど陸トレは成功していません。重量や回数よりも「翌日の動きが軽いか」を成否の指標にし、基礎→最大→移行→維持の順序を崩さないで進めます。

STEP1: 大会までの週数を逆算して期を配分。
STEP2: 週の山谷を先に書き、陸トレを谷へ配置。
STEP3: 各期のレップ帯とRPEを一行で定義。
STEP4: 翌日の主観を記録し、量を自動調整。

用語集
RPE: 主観的運動強度。10が限界。
ヒンジ: 股関節主導の屈伸動作。
テーパー: 試合前に総量を減らす期。
片脚系: 片脚で支える種目群。
加速局面: 動作中で速度を乗せる区間。

泳法別の優先動作と筋群を決める

泳法別の優先動作と筋群を決める

泳ぎは泳法ごとに力の向きが異なります。自由形/背泳ぎはヒンジと肩甲帯の下制、バタフライは体幹の波と股関節伸展、平泳ぎは股関節外旋と内転が鍵です。優先を絞ると、少ない種目でもフォームが安定し、疲労の分散を防げます。

自由形と背泳ぎの優先

骨盤の安定と肩甲骨の下制後傾を中心に据えます。RDLとヒップスラストでヒンジを鍛え、デッドバグ/プランクで体幹の張りを覚え、チンアップとロウで縦引きと横引きを補強します。押し系は最小限に抑え、引き6:押し4の比で肩を守ります。キックが重くなる前日に脚の重い種目は避けましょう。

バタフライの優先

胸郭の伸縮と股関節伸展が要点です。プルオーバーで胸郭の可動を引き出し、ヒップスラストで「後ろへ押す」を磨き、メディシンボールのスラムで速い下向きの力を作ります。ロールアウトで体幹をつなぎ、腰の反りすぎを避けます。セットは短く、速度を保つ範囲で終えるのがコツです。

平泳ぎの優先

股関節外旋/内転と足首の柔らかさが勝負所です。コペンハーゲンプランクとサイドランジで内転筋を鍛え、90/90座位やアンクルモビリティで可動を確保します。プルは水平内向きが多いため、ケーブルでの内転・内旋を軽負荷で丁寧に。膝への負担が出たら即量を引きます。

メリット 泳法の力の向きに合わせると、少ない種目でも水を捉える感覚が安定します。
デメリット 目的外の種目を増やすと疲労が拡散し、翌日の泳ぎが重くなります。

よくある失敗と回避策1 全泳法に同じ陸トレ。対策 泳法ごとに1〜2種を入れ替えます。

よくある失敗と回避策2 背泳ぎで胸を張りすぎる。対策 下制後傾を優先し腰椎は反らない。

よくある失敗と回避策3 平泳ぎで内転が弱い。対策 週2のサイドプランク+内転上げ。

自由形の後半で蛇行が出たが、引き系と片脚ヒンジを増やし、ベンチ系を減らしたところ、ヘッドアップが減ってストロークが伸びた。選択と集中の効果を実感した。

泳法別の優先を明確にすると、同じ時間でも結果が変わります。
一方で、選択を誤ると水中の再現性が下がり、肩や腰の違和感が増えます。メニューは「増やすより削る」を合言葉に、3種目前後へ絞るほど、翌日の泳ぎが整いやすくなります。RPEの感覚を記録し、週単位で配分を見直すと、持続可能な設計に近づきます。

器具別の陸トレメニューを組む

道具は目的のための手段です。スイム量が多い日は自重とチューブ、余裕のある日はメディシンボールや軽中重量を使い、疲労の総量を管理します。器具ごとに役割を決め、同じ動作を重ねないようにすると、少ない種目で効果が出ます。

体幹安定化ルーティン

プランク前/横、デッドバグ、バードドッグを20〜40秒で2〜3セット。肋骨を締め、骨盤をニュートラルに保つことが条件です。呼吸は吐きを長く、吸いは短く。首を長く保ち、肩甲骨は下制し続けます。翌日のストロークテンポが落ちない範囲で終えます。

下半身のヒンジと片脚操作

ヒップヒンジ、ブルガリアンスクワット、カーフレイズを8〜12回×2〜3セット。足裏三点で床を押し、膝はつま先と同方向。片脚系を入れると骨盤の水平が保たれ、ローリングやキックの軸が安定します。腰の反りや膝のねじれが出たら即中止です。

水中動作に近いプル動作

チューブプル(片腕/両腕)、プルオーバー、ケーブルの内転・内旋を実施。動作の最後を強くせず、途中で加速して「捉える」感覚を育てます。レストは短めにしてリズムを保ち、呼吸を止めません。肩前面が張る場合は量を半減します。

Q: 自重だけで十分ですか。
A: 泳ぎの量が多い期には十分です。最大筋力を狙う期だけジムを併用します。

Q: いつ行うのが良いですか。
A: 速度系スイムのない日に。行うなら泳ぐ前は軽め、後は丁寧に。

Q: 何分が目安ですか。
A: 20〜30分で十分です。疲労が残る前に終えます。

チェックリスト
プランクで腰が反っていないか。
片脚で骨盤が傾いていないか。
チューブの戻しを雑にしていないか。
呼吸を止めず吐きを長く取れているか。
前日の疲労部位を避けているか。

ベンチマーク早見
プランク前/横45秒×2を余裕で維持。
ブルガリアンスクワット自重12回×2。
チューブ外旋15回×3で違和感ゼロ。
デッドバグ左右10回×2で腰の浮きなし。
スラム10回×3で呼吸が乱れすぎない。

器具が変わっても「目的→動作→量→記録」の順は同じです。
新しい種目を増やすほど管理が難しくなるため、似た刺激は排除し、役割が被るものは週ごとに入れ替えます。少ないほど再現性が高まり、フォームは整っていきます。

水泳で陸トレのメニューを週内に配置する設計

水泳で陸トレのメニューを週内に配置する設計

同じ種目でも置き所で結果は変わります。短距離はパワー寄りに、中長距離は耐久寄りに寄せつつ、強い日の前後に回復とモビリティを挟みます。泳ぎの山と陸の谷を合わせると、少ない量でも効果が出やすくなります。

初級者の一週例

月: 自重20分+フォームスイム。火: 休養かモビリティ。水: 自重30分+ドリル多め。木: オフ。金: チューブ20分+イージー。土: ジム40分(軽〜中)。日: 完全休養。各日は2〜3種目で終了し、動作の質を最優先にします。疲労感が強い部位は即座に外します。

短距離志向の一週例

月: ヒンジ重め+プル強化。火: 速度ドリル。水: パワー系メディシンボール。木: 軽い全身回し+モビリティ。金: スプリント。土: 回復。日: 休養。重い日は翌日のスイム量を抑え、スプリント前日は脚を温存します。RPEは7〜8で切り、爆発より精度を優先します。

中長距離志向の一週例

月: 自重+体幹とチューブ。火: 有酸素スイム長め。水: 下半身中強度とロウ系。木: オフ。金: 低負荷サーキットとフォーム確認。土: イージー+モビリティ。日: 完全休養。回数は多めでも雑にならず、最後の2レップに余裕を残すのが基準です。

曜日 スイム焦点 陸トレ焦点 時間 備考
技術/フォーム 体幹/チューブ 20–30分 呼吸と姿勢を整える
量/イージー 下半身ヒンジ 30–40分 翌日に速度練が無い週だけ重め
速度/テンポ パワー系 20–30分 短時間で切り上げる
回復/ドリル モビリティ 15–20分 可動域を整える
休養 休養 完全オフで充電

ミニ統計
週に完全休養を1日置いた期間は、翌週のテンポ維持率が上昇。
重いヒンジを水曜に固定すると、金曜のスプリントの失速が減少。
モビリティを土曜固定にすると、肩前面の違和感報告が低下。

配置の原則は「強いスイムの前に重い脚を置かない」「スプリント前日は肩に優しく」「回復は予定に書く」です。予定は守るよりも更新することに価値があります。

計画は現場で揺れます。
仕事や学業の都合で崩れたら、その週は「最小構成」に落として翌週に持ち越します。RPEとレップ速度、起床時の体調をメモし、三つの指標が揃って良い日にだけ強度を上げると、長期の積み上げが安定します。迷ったら量より質を選びます。

ジムでの重量トレを泳ぎの方向で選ぶ

重量は数字ではなく方向と速度で評価します。ヒンジスクワットプルプッシュを軸に、水を押す/引く向きへ合わせます。痛みゼロと呼吸の継続が条件で、質が崩れたら即終了です。

下半身の基軸種目

ルーマニアンデッドリフト、ヒップスラスト、フロントスクワットを中心に3〜5回×3〜5セット。バーは体に近く、背中は長く、足裏で床を押します。上げ切りで呼吸を止めず、骨盤を水平に保つこと。翌日のキックが重くなるなら重量を引きます。

上半身の縦引きと横引き

チンアップ/ラットプル、ベントオーバーロウ、ワンハンドロウを選択。肘は後ろへ引き、肩甲骨は下制・内転。押し系はインクラインダンベルとプッシュアップ程度で十分です。引き6:押し4の比率で肩を守り、親指を巻いたグリップで前腕を安定させます。

速度とパワーの展開

軽中重量のジャンプスクワットやケーブルプレス、メディシンボールスローで加速を養います。目的は最大出力ではなく、フォームを崩さず速く動かすこと。レストは短め、RPEは6〜7で切り上げます。勢い任せの反動は禁物です。

  1. 重量は「良いフォームであと2回」の手前で止める
  2. 速度は最初から最後まで一定を守る
  3. 引き系を優先し肩の前面の張りを抑える
  4. 片脚系で骨盤の水平を鍛える
  5. RPEとレップ速度を記録する
  6. 前日の疲労部位は狙わない
  7. 月1回は総量を落とす
  8. 違和感が出たら即中止

重量を追うほど水中での再現性が下がる人は多いです。数字よりも方向と速度、翌日の泳ぎの軽さを基準に切り上げ、疲労はプールに持ち込まない姿勢を徹底します。

ミニ統計
引き系を週2入れた群は蛇行が減少。
ヒンジ優先の群は50m後半のストローク長が維持。
ベンチ系を減らした群は肩前面の違和感が低下。

ジム種目を増やすほど管理が難しく、泳ぎに影が落ちます。
役割が重なるものは削り、足りない方向だけを足す。これだけで質は上がります。フォームが崩れたセットは「無かったこと」にせず、原因を記録し、次回の重量や順序に反映させていきましょう。

回復と可動域、ケガ予防を設計に織り込む

強いメニューほど、回復と可動域の設計が価値を持ちます。睡眠と栄養モビリティセルフケアをタスク化し、泳ぎの質を落とさずに積み上げる仕組みにします。数字よりも再現性を守ることが長期の近道です。

肩と股関節のモビリティ

胸椎回旋、肩外旋/内旋、股関節屈曲/外旋を毎回5分。スティックで胸を開き、四つ這いのスレッドニードル、90/90座で股関節を滑らかにします。可動は「大きければ良い」ではなく、泳ぎの位置に合う範囲で十分です。痛みや引っかかりがあれば中止します。

セルフケアのミニマム

フォームローラーで大腿外側と背部、ボールで肩甲下、ふくらはぎを1部位30〜60秒。やり過ぎは硬さを招くため、痛気持ちいい強さで止めます。終わりに深い呼吸で副交感を促し、睡眠の質を上げます。夜の強い刺激は避けます。

疲労と痛みの線引き

張りや重さは休養で抜けますが、鋭い痛みや夜間痛は中止のサインです。部位が熱い、腫れる、可動で引っかかる場合は専門家の評価を優先します。痛みを押しての継続は、翌週の泳ぎの再現性を壊すリスクが高いと心得ます。

  • 就寝時間を固定し、7〜9時間を確保する
  • 練習後30分内に炭水化物とタンパク質を摂る
  • 動的ストレッチは前、静的は後に行う
  • 週1回は完全休養を入れる
  • 仕事や学業の繁忙期は量を引く
  • 違和感が出た種目は削除して翌週で再評価
  • 朝の体調とRPEをメモする
  • 睡眠が荒れたら強度を自動で落とす

Q: 何時間眠れば良いですか。
A: 目安は7〜9時間です。早朝練が続く週は昼寝で補います。

Q: 入浴は回復に役立ちますか。
A: ぬるめで長めが向きます。激冷はレース前の覚醒目的に限定します。

Q: ストレッチはいつ行うべきですか。
A: 練習前は動的、後は静的で5〜10分が目安です。

完全休養を週1入れ、就寝時間を固定しただけで、翌週のテンポ練の完遂率が上がった。やることを減らしたのに、泳ぎは軽くなった。

回復こそ最もコスパの良い強化策です。
食事と睡眠を整え、可動域を保てば、同じ練習量でも結果は変わります。痛みゼロの原則を守り、陸トレも泳ぎも「続けられる形」に整えることが、最短距離の戦略です。

まとめ

陸トレは水泳の質を長く保つための手段です。期分けで狙いを一つずつ進め、泳法ごとに優先動作と筋群を入れ替え、自重とチューブからジムへと段階的に上乗せします。
週内の配置は強いスイムの前に重い脚を置かないこと、スプリント前日は肩に優しくすること、回復は予定に書くこと。RPEとレップ速度、起床時の体調を記録し、翌週に配分を更新してください。
メニューは少なく、動作は丁寧に、痛みはゼロで。続けられる設計こそが、結果を押し上げる土台になります。