- 配分比は3通りの標準形から選びます
- 1RM換算は式の特性を理解して使い分けます
- 12週は容量→強度→ピークの順で組みます
- 弱点は動作局面と筋群で特定して崩します
- 栄養と睡眠は計画に同期させて最適化します
big3で300kgを現実にする|落とし穴
最初に「300kg」という合計がどの位置づけかを掴みます。数字だけを切り取らず、体重当たりの相対強度やトレ歴、フォームの完成度を重ねて評価することで、到達までの距離感が具体になります。ここを曖昧にしたまま負荷だけを上げると、回復計画と噛み合わず遠回りになります。相対強度と技術成熟という二軸で見取り図を作っておきましょう。
体重当たりで把握する相対強度の見取り図
同じ合計でも体重によって体感は変わります。体重60kgで300kgは5倍、70kgで約4.3倍、80kgで3.75倍です。相対強度が高いほど関節や腱への負荷は増えるため、練習密度やデロード頻度を高めに設計すると無理が出にくくなります。逆に体重が重い場合は移動距離や可動域の管理が重要で、フォームの精度が合計に直結します。体重を動かす競技ではありませんが、相対視点を持つと進捗の評価が安定します。
トレ歴と技術成熟で到達の射程を決める
週2〜3回の練習が半年〜1年続いている層では、フォームの明確な破綻が少なければ300kgは中期目標になります。フォームの土台が未完成な段階では、重量よりも可動域とテンポの再現性を優先し、各リフトの「基礎セットボリューム」を確保すると近道です。練習回数が不足する時期は、週の中で重点リフトを固定し、刺激の波を作ると合計の伸びが安定します。
年齢・既往歴・可動域の違いを計画へ反映する
年齢や既往歴は進め方に影響します。肩の可動域が狭い人はベンチのアーチを欲張らず、肩甲骨の寄せと下制を優先して痛みを避けます。股関節や足首の柔軟性に自信がなければ、スクワットはハイバーやボックスを活用して深さの再現性を優先します。腰部既往があるなら、デッドは相対強度の調整とベルトの使いどころを明確にし、RPEの波で負荷を捌くと安全域が広がります。
競技基準と一般トレのギャップを理解する
競技の深さ基準や足設置ルールはジム練の自由度と異なります。合計の評価を競技規格で行うか、ジムの自由規格で行うかを先に決めると、フォームの方針が揺れません。競技規格に寄せるほど技術の再現性が重視され、練習の記録方法も厳密になります。一般トレの枠でも、目線は一定に保つと合計の積み上げは速くなります。
まず狙う配分の標準形と誤差の扱い
合計300kgの配分は、スクワット110〜120、ベンチ70〜85、デッド100〜120の範囲に収まることが多いです。初期はスクワットとデッドをやや大きく、ベンチは遅れて伸びる想定で進めます。肩や腰のコンディションで日次のブレが出ても、週単位での総ボリュームが予定に近ければ軌道修正は軽微で済みます。誤差は想定内として運用し、配分の大枠を崩さないことが合計の安定につながります。
注意
合計を急いで引き上げると関節の適応が追いつかず、痛みや停滞を招きます。週あたりの負荷増は小刻みにし、動作品質を崩す前にデロードを挟みましょう。
ミニ統計(体感の傾向)
- 合計の約35〜40%がデッド、30〜35%がスクワット、25〜30%がベンチに落ち着きやすい
- 週の練習回数が2→3に増えると、ボリューム確保で合計の伸びが安定
- 同配分であってもフォームの再現性が高いほどテスト日の成功率が上がる
比較ブロック
配分を固定:進捗が見えやすい。
調整は軽くて済むが、弱点放置になりやすい。
配分を柔軟化:弱点を崩しやすい。
管理の難度が上がるため、記録の精度が必須。
相対強度、トレ歴、技術成熟、規格の四点で「300kgの位置」を把握できれば、焦点が定まります。合計は三つの動作の積分値です。要素を分けて扱い、週と月のスパンで微調整を繰り返す運用へ移りましょう。
配分比と換算式の要点:割合を決めて1RMを見積もる

合計を設計する際は、スクワット・ベンチ・デッドの割合を先に決め、練習中はサブマックスの重量から1RMを見積もって進捗をトラッキングします。ここでは配分モデルの選び方と、代表的な換算式の使いどころを整理します。配分と換算が噛み合うと、日々の判断が単純になります。
合計から逆算する3つの配分モデル
標準型は「S:35% B:30% D:35%」。バランス重視で、初期〜中期の導入に向きます。下半身優位型は「S:38% B:27% D:35%」。脚力が前に出る人に合い、ベンチの遅れを許容しつつ全体を底上げします。引き優位型は「S:32% B:28% D:40%」。背面鎖の強さを活かして合計を押し上げる狙いです。配分は固定ではなく、弱点の改善に伴ってゆっくり変化します。まずは標準型から入り、半年単位で見直すと筋力の偏りが最小化されます。
1RM換算式の使い分け(EpleyとBrzycki)
日常のセットから最大値を推定するには、代表的にEpley(重量×(1+回数/30))とBrzycki(重量×36/(37−回数))が使われます。5〜10回域では両者の差は小さく、3回以下の高強度域ではブレが出ます。練習の中心が5〜8回ならEpley、3〜5回中心でピークを探る局面ではBrzyckiで併記し、二つの中央値を「今日の推定」として扱うと暴走を防げます。推定値は目安であり、実測の更新日で校正をかける運用が現実的です。
セット構成とレップ範囲の目安
容量期は6〜10回×3〜5セットで総挙上量を稼ぎ、強度期は3〜5回×3〜5セットで神経的な適応を進め、ピーク期は1〜3回×2〜4セットで動作の速度と集中を優先します。アクセサリーでは12〜15回の高回数域で弱点筋の持久を補強します。各相でRIR(残レップ)を1〜3に保ち、フォームの再現性を壊さずに積み増すことが、長期の伸びに直結します。
手順ステップ:推定1RMの運用
- セットの重量・回数を記録
- EpleyとBrzyckiの両式で推定
- 中央値を当日の推定1RMとする
- 週の終わりに移動平均で平滑化
- 更新日(4〜6週)に実測で校正
ミニ用語集
RIR…残せた回数。1ならあと1回可能の主観。
RPE…主観的強度。RIRと相互換で運用。
ピーキング…テスト日に向けて疲労を抜きつつ強度を高める段階。
移動平均…推定値の短期的なブレを慣らす処理。
ベンチマーク早見
- 5回×重量の推定はEpleyとBrzyckiの差が小さい
- 1〜3回域では推定の誤差が広がるため併記が無難
- 推定は意思決定の材料。更新日で必ず校正する
配分と換算を整えれば、日々の練習は静かな繰り返しに変わります。数字を適切に疑い、フォームの再現性へ投資する姿勢が、合計の上昇角度を決めます。
技術チェックとフォーム要件:安全域を広げて伸ばす
フォームは合計を支える土台です。可動域の再現性、バーの軌道、腹圧の使い方、テンポ管理が安定して初めて、重量は長期的に積み上がります。ここでは三種目ごとに、再現性と安全性を両立させる要点を整理します。品質の安定が伸びの安定です。
スクワット:深さ・スタンス・バー位置の整え方
深さは股関節が膝より下へ入る目安で固定。スタンスはつま先10〜30度外旋、足幅は肩幅前後から微調整。ハイバーは体幹の直立性が高まりやすく、ローバーは股関節主導で重量を稼ぎやすい構造です。いずれも胸郭を開き、呼気で腹圧を固めてから下降を開始。ボトムでの反発は骨盤の後傾を誘発しない範囲に留め、上昇は足裏全体で床を押し続けます。動画で膝と腰のタイミングを揃え、前傾の暴走を抑えると安定します。
ベンチプレス:肩甲骨とアーチの管理
肩甲骨の寄せと下制で土台を作り、胸骨の向きとグリップ幅を揃えます。ブリッジは腰に痛みが出ない範囲で、胸を高くする意識よりも肩を安全に保つ意識が優先です。足の踏ん張りで骨盤の位置を固定し、バーは肩の真上から胸の下部へ斜めに下ろし、同じ軌道で押し戻します。肘の角度は上腕が体幹と約45〜75度を目安に個体差で調整。セット中に軌道を変えないことが、肩の快適さと重量の両立を生みます。
デッドリフト:グリップと背部剛性の維持
足幅は種目により異なりますが、コンベンショナルでは腰幅前後、スモウでは広めに。バーは土踏まずの上に置き、脛が触れる直前の距離でスタート。背部はニュートラルを保ち、腹圧を先に固めてから脚と背で同時に床を離れます。グリップはオルタネイトやフックの活用でバーの回転を抑え、握力の限界で動作品質が崩れないようにします。軌道はすね→大腿→ロックアウトまで体に近く、膝前を離れないラインを維持します。
ミニチェックリスト
- 下降前に腹圧を作れているか
- 動画で軌道が毎回重なっているか
- 足圧と呼吸のテンポが一致しているか
- 痛みなく翌日に疲労が残り過ぎないか
- セット内でキュー(合図)が再現できているか
よくある失敗と回避策
急いで深さを求め腰が丸まる→ボックスで可動域を固定し段階的に深くする。
ベンチで肩が痛む→肩甲骨の下制を優先し、グリップ幅と肘角度を再調整する。
デッドで膝前から離れる→バーを体に寄せ、脛と太腿への軌道接触を許容する。
事例引用
動画で毎週軌道を重ね、ボトムの停止時間を一定にしただけで、推定1RMのブレが半分になった。重量は据え置きでも成功率が上がり、テスト日に自己新へ到達しやすくなった。
フォームの再現性は最強のサプリメントです。日次の意識よりも、週単位の映像と記録で変化を追うと、伸びは静かに加速します。安全域が広がれば、合計は自然とついてきます。
12週のプログレッション設計:容量から強度へ、そしてピークへ

300kgへ向けた12週は、容量→強度→ピークの三段階で設計します。各段階に明確な役割を持たせ、RIRやRPEで日々の波を吸収しながら、週ごとに少しずつ階段を登ります。段階化と波の吸収が、無理のない上昇角度を作ります。
4週×3ブロックの全体像(容量→強度→ピーク)
第1ブロックは6〜10回中心で総挙上量を稼ぐ期間。アクセサリーも厚めに入れ、可動域の癖を整えます。第2ブロックは3〜5回中心で神経的適応を進め、メイントップセットの再現性を磨きます。第3ブロックは1〜3回域で速度と集中を優先し、疲労を抜きつつテスト日に向けて準備します。各ブロックの最終週はボリュームを1〜3割削って、次段階のために余白を作ると成功率が上がります。
RPE/RIRで日々の強度を微調整
睡眠や仕事の負荷で体調は揺れます。トップセットはRPE8〜9を上限に設定し、その日の動きが重ければ無理に予定重量へ固執しない運用が現実的です。バックオフはRIR2前後で量を確保し、フォームの再現性を崩さないテンポで積みます。デッドは疲労が乗りやすいため、週の後ろへ配置し、翌日の仕事や競技練習と干渉しないようスケジュールします。
デロードとテスト日の組み方
第6〜8週の間でデロードを挟み、筋骨格系の回復と神経的疲労のリセットを行います。テスト週はボリュームを半減、強度は維持〜微減で、成功体験を積んで終了する構成が無難です。記録更新の有無に関わらず、映像と推定値を整理し、次の12週への改善点を3つ以内に絞って書き出します。小さな反省の積み重ねが、次の合計を引き上げます。
- 容量期で土台を作る(6〜10回中心)
- 強度期で神経適応を進める(3〜5回中心)
- ピーク期で再現性を保ちつつ1〜3回域へ
- 疲労が濃い日はRPE基準で下げて継続
- デロードで回復、テストで校正して次へ
手順ステップ:週内の配置例
- 月:スクワット重+ベンチ中
- 水:ベンチ重+スクワット軽
- 金:デッド重+ベンチ軽
- 土:アクセサリーと可動域整理
注意
テスト週に新しいシューズやフォームを導入しないでください。慣らしは前ブロックで済ませ、当日は「普段通り」を再現します。
段階化と微調整の二本柱を守れば、12週は静かに積み上がります。焦りは最大の敵です。成功確率の高い設計で、合計300kgの確度を上げていきましょう。
補助種目と弱点強化:ボトルネックを崩して合計を押し上げる
弱点は動作局面と筋群で特定できます。立ち上がり、ボトム、ミッドレンジ、ロックアウトのどこで失速するかを動画で確認し、該当局面を直接刺激する補助種目を配置しましょう。局面別の処方と筋群別の補強で、停滞を崩します。
局面別の処方:立ち上がり・ボトム・ロックアウト
スクワットのボトムで失速するならポーズスクワットやテンポ(3秒下降)で位置感覚と安定性を強化。立ち上がりで潰れるならピン高さをミッドに設定したピンスクワットが有効です。ベンチのスティッキングポイントはボトム〜中盤で出やすく、長めのポーズやスパソで中間域を鍛えます。デッドの床離れが重いならデフィシット、膝上で止まるならラックプルやヒップスラストで後鎖を狙います。
押し引きのバランス:肩と背中の容量管理
ベンチの伸びが遅い場合、背中の容量不足がボトルネックになっていることが多いです。ロー系を週2で合計15〜25セットに収め、懸垂やラットプルで肩甲帯の動きを整えます。押し系はベンチに集中し、ダンベルは可動域を広げるための補助として扱います。肩の前側へ偏らないよう、外旋筋群と下部僧帽の活性化をセット間のミニドリルで入れると、肩の快適さが続きます。
体幹・握力・後鎖のパッケージ強化
スクワットとデッドの合計を押し上げるには、脊柱起立筋と臀筋群、ハムストリングスの連携が鍵です。ルーマニアンデッド、グッドモーニング、GHR、バックエクステンションを週に散らし、腰への局所負担を避けます。握力はデッドの上限を規定します。ハンドグリップやプレートピンチをアクセサリーに加えつつ、実戦的にはフックグリップやオルタネイトの使い分けで回転を抑えます。
- ボトム弱い→ポーズSQ・テンポSQ
- 立ち上がり弱い→ピンSQ・フロントSQ
- ベンチ中盤→スパソ・スリングショット
- 床離れ弱い→デフィシットDL
- 膝上停滞→ラックプル・ヒップスラスト
- 背中容量不足→ロー系増量と懸垂
- 握力不安→ピンチ・ハンドグリップ
Q&AミニFAQ
Q. 補助種目はいくつ入れる?
A. 各リフト2種まで。4週ごとに1種だけ入れ替えると効果が見えます。
Q. いつやる?
A. メインの後に3〜5セット。疲労が濃い日は種目数を絞り、量で担保します。
Q. 可動域ドリルは必要?
A. 必要です。セット間の短いドリルで肩・股関節を整えるとフォームが安定します。
比較ブロック
種目固定:適応が深まりやすい。
飽きと停滞が出たら負荷曲線で工夫。
種目ローテ:新鮮な刺激で伸びやすい。
記録管理が難しく、効果判定に時間がかかる。
補助は目的のための手段です。増やすほど強くなるわけではありません。局面と筋群で的を絞り、最低限のメニューで最大の変化を取りにいきましょう。
栄養・回復・スケジューリング:合計に効く生活の設計
練習が正しくても、栄養と回復が噛み合わなければ合計は頭打ちになります。体重当たりのたんぱく質、練習前後の炭水化物、水分と電解質、睡眠の質、日中の歩数。これらを計画へ同期させ、生活の摩擦を下げます。忙しい人ほど、ここで差がつきます。
1日の配分:たんぱく・炭水化物・水分の基準
たんぱく質は体重×1.6〜2.2gを目安に、3〜5回へ均等配分。練習前後の炭水化物は各0.5〜1.0g/kgを目安に置くと、集中と回復が安定します。水分は尿色を目安にしつつ、発汗が多い日は電解質を併用。カフェインはトレ前に少量を使い、睡眠の妨げになる時間帯は避けます。食事は練習計画に合わせて事前に準備し、当日の意思決定コストを減らしましょう。
睡眠とストレス管理:高出力を支える土台
睡眠は最強の回復手段です。就寝前の光と温度を整え、ベッドに入る前のルーティンを固定します。昼の短い散歩や軽いストレッチで交感神経の張りを解き、呼吸のテンポを整えると、セット中の集中も高まります。仕事の繁忙期は練習の強度を下げ、量で土台を維持する運用が現実的です。回復資源は有限であり、どこに配分するかが合計を決めます。
忙しい人の週スケジュール:現実解を探す
時間が限られているなら、週2の全身プランでも合計は伸びます。1日目にスクワット重+ベンチ中+背中、2日目にデッド重+ベンチ軽+後鎖で構成。移動や家族行事で崩れそうな週は、メインのトップセットだけでも実施し、連続性を優先します。途切れない練習が結局いちばん強い設計です。
| 項目 | 目安 | タイミング | 補足 |
|---|---|---|---|
| たんぱく質 | 体重×1.6〜2.2g/日 | 3〜5回に分割 | 練習後は消化の軽い形も可 |
| 炭水化物 | 練習前後各0.5〜1.0g/kg | 前60〜90分・後60分 | 固形と液体を使い分け |
| 水分・電解質 | 発汗と尿色で調整 | 日中均等・練習中適宜 | 夏季は電解質を意識 |
| 睡眠 | 7〜9時間 | 就寝前ルーティン固定 | 光・温度・カフェイン管理 |
ミニ統計(実務の手応え)
- 前後の炭水化物を固定すると推定1RMのブレが減少
- 就寝時刻の固定で週内の疲労感が安定
- 水分量の見直しでセット間の集中が維持
ミニ用語集
RIR/RPE…主観負荷の指標。強度の微調整に使う。
ピーキング…テスト日に向けて疲労を抜く段階。
トップセット…その日の最も重い主セット。
バックオフ…トップ後に量を稼ぐセット群。
生活が整えば、合計は静かに伸びます。練習で作った刺激を、栄養と睡眠で作品に仕上げる。これが最短距離です。
まとめ
big3で300kgを現実にするには、配分比と換算式で日々の判断を単純化し、12週の段階設計で静かに積み上げることが近道です。フォームの再現性を軸に、弱点は局面と筋群で特定して最小の補助で崩します。栄養・睡眠・スケジュールを計画に同期させ、忙しい週でも「途切れない練習」を守ると、合計は自然に上がります。数字を追い、同時に動作品質を磨く二輪駆動で、次のテスト日に自分の更新に会いに行きましょう。


