- 初期配分は標準型で開始し、半年ごとに再評価します
- 換算式はEpleyとBrzyckiを併記し中央値で運用します
- 容量→強度→速度の順で16週を段階化します
- 弱点は局面×筋群で特定し、補助は最小限で効かせます
- 栄養・睡眠・水分を設計に同期し、テスト週に合わせます
big3で500kgに挑む|実例で理解
まず500kgが体格とトレ歴に対してどの位置にあるのかを、倍率と再現性で把握します。体重当たりの合計倍率、可動域の固定度、週当たりの総挙上量、競技規格への適合。これらを重ねた「地図」を先に用意すれば、焦りは減り、正しい遠回りだけが残ります。相対強度と配分比を同じ視界に置くことが、第一歩です。
体重当たりで読む負担と適応のレンジ
同じ500kgでも体重70kgなら約7.1倍、80kgなら6.3倍、90kgなら5.6倍です。倍率が高いほど腱・靭帯の適応に時間が要り、デロード頻度や睡眠の確保が成功率を左右します。逆に体重が重い人は移動距離と可動域の再現性が合計に直結します。倍率と可動域の掛け算で負担を見積もり、週当たりの総挙上量を無理なく積めるゾーンを探しましょう。
配分の仮置き:S・B・Dの割合を最初に決める
入口の配分は「S:36 B:26 D:38」を標準とし、引き優位ならD:40まで許容、脚優位ならS:38で組みます。ベンチは中期の伸び代が大きいので、頻度で稼ぎつつ停滞を招かないボリュームへ整えます。配分は固定ではなく、四半期ごとの推定1RMの傾きと動画の質で微調整します。
技術成熟の指標:合図・軌道・可動域の再現
日常のトップセットで同じ合図を同じ順で実行できるか。バーの軌道が動画で重ねたときに一致するか。深さや停止の可動域が揺れていないか。これら三点が安定して初めて高重量が素直に乗ります。テスト日だけの良いフォームは存在せず、普段の再現性が合計の上限を決めます。
競技規格かジム規格か:旗を先に立てる
競技を視野に入れるなら深さ・停止・足設置のルールに合わせ、動画も同規格で評価します。ジムでの安全最優先なら可動域の固定と再現性を徹底します。途中で規格を揺らすと記録の整合が崩れ、配分判断が迷子になります。先に「旗」を立て、記録と練習をその旗に合わせましょう。
到達までの現実的な射程を逆算する
合計450kg層は12〜24週、400kg層は24〜48週が目安です。仕事や学業の繁忙期には強度を抑え、トップセットだけでも連続させて「習慣の連鎖」を切らないことが最短路となります。焦りで配分を動かすより、映像と推定の一致を積む方が結局速いのです。
注意
配分の急旋回はケガの誘因です。週次の変更は1〜2割に制限し、技術の再現を先に安定させてください。
ミニ統計(傾向感)
- 500kg付近ではデッド比率が37〜42%に収斂しやすい
- 週4化は短期の伸びに有効だが、長期は睡眠が支配的
- 映像管理でテスト日の失敗率が低下する傾向がある
比較ブロック
バランス配分:三者の伸びが揃い停滞の予兆を読みやすい。
短期の最高到達は控えめでも長期は安定する。
尖り配分:合計が速く伸びやすい。
弱点が濃く出るので補助の適合が不可欠。
相対強度と配分の地図を手にしたら、迷いは減ります。次章では換算式の運用を整え、日々の判断を簡素化します。数式は真実ではなく、賢い意思決定の道具です。
換算式と配分運用:推定を意思決定に変える

同じ練習でも、推定1RMの扱い方で成果は分かれます。EpleyとBrzyckiを使い分け、中央値で運用し、定期的に実測で校正する。配分比の仮置きを支える「推定の一貫性」を作れば、迷わずに積み上げられます。道具の二刀流を制定し、判断の雑音を消します。
主要換算式の二刀流と使い分け
Epley(重量×(1+回数/30))は5〜8回域で安定、Brzycki(重量×36/(37−回数))は3〜5回域で敏感です。双方を計算し中央値を当日の推定とする運用は、過小評価と過大評価の偏りを相殺します。テスト日(4〜8週ごと)には実測で校正し、グラフの傾きを評価して配分や頻度の微修正に活かします。
セット設計とRIR管理:容量・強度・速度の配分
容量期は6〜10回×3〜5セット、強度期は3〜5回×3〜5セット、ピークは1〜3回×2〜4セット。トップセットはRPE8.5を上限、バックオフはRIR2前後でフォームの再現に充てます。アクセサリーは12〜15回域で弱点筋へ均等に刺激を散らし、神経疲労を抑えながら土台を厚くします。
校正タイミング:移動平均とテストの連携
週末に移動平均で推定のブレを平滑化し、4〜8週目に実測で校正します。校正で出た差分はフォームや睡眠、栄養の見直しに直結させます。数字の表面だけではなく、背後の行動が整えばグラフは自然に右肩上がりになります。
手順ステップ:推定1RMの運用
- その日の最重量セットを記録(重量・回数・RIR)
- EpleyとBrzyckiで計算し中央値を採用
- 週末に移動平均で傾きを確認
- 4〜8週ごとに実測で校正
- 差分の原因を睡眠・栄養・フォームへ反映
ミニ用語集
RIR…残レップ。1は「あと1回いける」の主観指標。
トップセット…その日の最重主セット。意思決定の基準。
バックオフ…トップ後の量を稼ぐセット群。型を磨く場。
移動平均…短期のブレを慣らす平滑化の考え方。
ベンチマーク早見
- 5回域:EpleyとBrzyckiの差が小さく実務向き
- 3回域:差が広がるため中央値運用が安全
- 1回域:推定は参考止まり。必ず実測で校正
推定の型が決まれば、毎日の判断は軽くなります。次章では高重量でも崩れないフォームの要件を、各リフトで具体化します。
フォームの安定化:高重量でも壊れない型を積み上げる
500kg圏では、可動域の固定と軌道の再現が合計の上限を決めます。スクワットは深さと骨盤コントロール、ベンチは肩甲帯の固定と軌道、デッドは背部剛性と近接軌道。いずれも「同じ合図を同じ順で再現できるか」が成熟の指標です。安全域の拡張が更新の近道になります。
スクワット:深さと骨盤コントロールの両立
深さは股関節が膝より下へ入るラインで固定。下降中は胸郭を開いたまま腹圧を維持し、ボトムで骨盤の過剰な後傾を抑えます。ハイバーは体幹直立で膝主導、ローバーは股関節主導で重量が乗りやすい構造です。どちらでも足裏全体で押し、反発は意図的に小さく扱いましょう。
ベンチプレス:肩を守る軌道と肩甲帯の固定
肩甲骨の寄せ+下制で土台を作り、ブリッジは腰の快適さを優先して調整。バーは肩の真上から胸下部へ斜めに下ろし、同じ軌道で戻します。肘角は45〜75度で個体差を許容。足の踏ん張りで骨盤を固定し、停止の長さは練習中から一定にします。
デッドリフト:近接軌道と背部剛性の両立
スタンスはコンベンショナルなら腰幅、スモウは広め。バーは土踏まずの上、脛に触れる直前の距離。腹圧を先に作り、脚と背で同時に床から離れる意識を持つ。軌道は常に身体に近く、膝前を離れないラインで引き切ります。グリップはオルタネイトかフックで回転を抑えます。
ミニチェックリスト
・下降前に呼気で腹圧を固定できたか。
・同じ合図を同じ順で言えているか。
・動画の軌道が前回と重なっているか。
・翌日に痛みではなく筋肉痛が出ているか。
・足圧とリズムがセット内で一致しているか。
よくある失敗と回避策
ボトムで骨盤が丸まる→ボックスで可動域を段階化し、テンポ下降を挿入。
肩前が張って痛む→下制を優先し、グリップ幅を一段狭めて再評価。
膝前でバーが離れる→脛〜大腿の接触を許容し、近接軌道を徹底。
事例引用
同じ合図と1秒停止だけで推定のブレが半減。重量据置の4週でも、テスト日には確率高く更新へ届いた。
品質が整えば、重さは自然に乗ります。次は16週の段取りを敷き、迷わずに登るための地図を用意します。
16週ピーキング:容量から強度、そして速度へ移す

合計を確実に引き上げるには、容量→強度→速度(ピーク)の三段階で16週を設計します。各段階に明確な役割を割り当て、RIR/RPEで日々の疲労を吸収すれば、更新日まで静かに登れます。段階化と波の吸収が鍵です。
ブロック設計の全体像を掴む
第1ブロック(W1-4)は6〜10回中心で容量を作り、アクセサリー厚め。第2ブロック(W5-8)は3〜5回中心で神経適応を促進。第3ブロック(W9-12)は2〜4回で強度を維持しながら疲労を整えます。第4ブロック(W13-16)は1〜3回域で速度と集中を最優先、W16をテストに設定します。
週内配置と干渉回避の考え方
週3なら「月:SQ重+BP中/水:BP重+SQ軽/金:DL重+BP軽」、週4なら「月:SQ重/火:BP重/木:DL重/土:SQ軽+BP中」。デッドの疲労は翌日に残るため、翌日の高出力練習と衝突しないよう配置します。繁忙期はトップセットを残し、量で土台を維持する運用が現実的です。
デロードとテスト週の流れ
W8かW12でデロードを挟み、ボリュームを半減。W15は強度維持・量軽め、W16でテスト。新しいギアやフォームは導入せず、普段通りを再現します。記録の有無に関わらず、映像と推定の差分を整理し、次の16週へ改善点を3つ以内で渡します。
| 段階 | 週 | レップ域 | 狙い |
|---|---|---|---|
| 容量 | 1-4 | 6-10回×3-5 | 筋量と耐性の獲得 |
| 強度 | 5-8 | 3-5回×3-5 | 神経適応と出力の向上 |
| 調整 | 9-12 | 2-4回×2-4 | 疲労整備と精度の向上 |
| ピーク | 13-16 | 1-3回×2-4 | 速度と集中の最適化 |
Q&AミニFAQ
Q. 週3と週4はどちらが有利?
A. 週4は短期の伸びに寄与しますが、睡眠が崩れるなら週3の方が長期成長は安定します。
Q. デロードはいつ入れる?
A. 8週目か12週目。疲労の主観と推定の傾きで前後させます。
Q. テスト週のアップは?
A. 普段の比率を維持し、セット数を1〜2減らすだけにします。
- W1-4で容量を作り、動作品質を磨く
- W5-8で強度を押し、ピークの土台を固める
- W9-12で疲労を整え、精度を上げる
- W13-16で速度を最優先にし、更新へ収束させる
段取りが決まれば、不調の週が来ても方針は揺れません。静かに前進し、成功確率を最大化しましょう。
弱点補強の設計:局面×筋群でボトルネックを崩す
停滞は「どの局面で失速し、どの筋群が働きにくいか」を特定できれば解けます。立ち上がり・ボトム・ミッドレンジ・ロックアウトのどこで止まるのか、動画で可視化し、最小の補助で崩します。局面別の処方と筋群別の補強を束ねて、過剰な種目数を避けましょう。
局面別の処方と効果判定の手順
スクワットのボトム弱さにはポーズSQやテンポ下降(3秒)、立ち上がりにはピンSQやフロントSQ。ベンチの中盤停滞にはスパソやスリングショット、長め停止で弾み依存を断ちます。デッドの床離れはデフィシット、膝上はラックプルやヒップスラストで後鎖を強化。4〜8週で効果判定し、各リフト2種までで回すと進捗が見えます。
押し引きバランス:背中容量と肩の快適さ
ベンチの伸び悩みは背中容量の不足が原因になりやすいです。ロー系を週2で合計12〜20セット、懸垂やラットプルで肩甲帯の動作を整える。押し系のダンベルは可動域を広げる補助に位置づけ、肩前への偏りを避けます。外旋筋群と下部僧帽はセット間のミニドリルで活性化し、肩を守ります。
後鎖・体幹・握力の底上げ
合計を押し上げる縁の下は、臀筋群・ハムストリングス・脊柱起立筋の連携です。ルーマニアンDL、グッドモーニング、GHR、バックエクステンションを週内に分散し、腰への局所負担を避けます。握力はデッドの上限を規定するため、フックやオルタネイトの使い分け+ピンチ・ハンドグリップで底上げします。
- ボトム弱い→ポーズSQ・テンポSQを4〜8週
- 立ち上がり弱い→ピンSQ・フロントSQを採用
- 中盤停滞→スパソ・スリングショットで中間域強化
- 床離れが重い→デフィシットDLで初動の技術を獲得
- 膝上で止まる→ラックプル・ヒップスラストで連携強化
- 背中容量不足→ロー系増量・懸垂で土台を拡張
- 握力不安→ピンチ・ハンドグリップで補強
注意
補助の入れ替えは1回に1種まで。複数同時に変えると、因果が見えず学習が止まります。
ミニ統計(実務の手応え)
- 動画で局面特定→補助2種運用で停滞解消率が上昇
- 背中容量12〜20セットでベンチの伸びが安定
- 握力ドリルの併用でデッドの失敗率が低下
補助は目的のための手段です。数ではなく適合で選び、フォームの再現を壊さない最小限で前進しましょう。
栄養・回復・スケジュール:合計に効く生活設計
練習計画が正しくても、栄養と回復が同期しなければ合計は伸び切りません。体重当たりのたんぱく質、トレ前後の糖質、水分・電解質、睡眠衛生、日中の歩数。これらを計画へ同期し、生活の摩擦を減らします。忙しい人ほど、この章が伸びの差になります。
一日の配分指針:たんぱく・糖質・水分
たんぱく質は体重×1.6〜2.2g/日を3〜5回へ均等配分。トレ前後は各0.5〜1.0g/kgの糖質を置くと集中と回復が安定します。水分は尿色で調整し、発汗が多い日は電解質を併用。カフェインはトレ前に少量、睡眠の妨げになる時間帯は避けます。食事は前日に簡単に仕込み、当日の意思決定コストを減らしましょう。
睡眠とストレス管理:高出力の土台
就寝前の光・温度・行動を固定し、入眠の儀式を持ちます。昼の短い散歩や軽いストレッチで交感神経の張りを解き、呼吸のテンポを整えるとセット中の集中も高まります。繁忙期は強度を抑え、量で土台を維持する運用が現実的です。回復資源は有限で、どこに配るかが合計を決めます。
忙しい人の現実解:週2でも伸ばす設計
週2の全身プランでも合計は伸びます。1日目はスクワット重+ベンチ中+背中、2日目はデッド重+ベンチ軽+後鎖。移動や行事で崩れそうな週はトップセットだけでも実施し、連続性を最優先にします。途切れない練習が結局いちばん強い設計です。
| 項目 | 目安 | タイミング | 補足 |
|---|---|---|---|
| たんぱく質 | 体重×1.6〜2.2g/日 | 3〜5回に分割 | トレ後は消化の軽い形も可 |
| 糖質 | トレ前後各0.5〜1.0g/kg | 前60〜90分・後60分 | 固形と液体を使い分け |
| 水分・電解質 | 発汗と尿色で調整 | 日中均等・練習中適宜 | 夏季は電解質を強化 |
| 睡眠 | 7〜9時間 | 就寝前ルーティン固定 | 光・温度・カフェイン管理 |
よくある失敗と回避策
高タンパクに偏り糖質が不足→集中と回復が鈍るため、前後の糖質を固定。
就寝前の画面時間が長い→光を落とし、入眠儀式を固定。
水分が少ない→尿色を指標に、電解質も併用。
ベンチマーク早見
- 前後の糖質固定で推定1RMのブレが減少
- 就寝時刻の固定で週内の疲労感が安定
- 水分量の見直しでセット間の集中が維持
生活が整えば、練習の刺激は作品に仕上がります。更新日へ向け、栄養と睡眠を設計へ結びつけていきましょう。
まとめ
big3で500kgに挑むには、配分比と換算の運用で日々の判断を簡素化し、16週の段階設計で静かに積み上げることが近道です。フォームは可動域・軌道・腹圧・テンポの四点を固定し、弱点は局面×筋群で絞って最小の補助で崩します。栄養・睡眠・水分は計画に同期させ、忙しい週でも「途切れない練習」を守る。数字を追い、同時に動作品質を磨く二輪駆動で、次のテスト日に自分の更新に会いに行きましょう。


