筋トレ全身法を週5で回す|疲労管理と強度配分のメニュー設計完全指針

gym-deadlift-bokeh 筋トレの基本

週5で全身法を運用すると、部位分割よりも高頻度で基本動作を練習でき、フォームの再現性と総ボリュームを両立できます。ただし成功の鍵は、強度・回数・可動域・休息のばらつきを最小化しつつ、週内で刺激を小刻みに入れ替える設計にあります。
本稿では、強度配分の指針、メニューの枠組み、栄養と睡眠、進捗の見方、危険信号の扱いまでを順序立てて解説します。まずは全体像の要点です。

  • 週5全身法は強度・ボリューム・密度の三軸で調整する
  • 基本三動作(スクワット・ヒンジ・プレス)を日替わりで主役化
  • 疲労は翌日の可動域とRPEで管理し痛みゼロを厳守
  • 栄養は練習前後の炭水化物と睡眠の質を最優先
  • 停滞時は可動域・休息・回数域のどれか一つだけを変更
  • 月次でデロードを挟み、主観指標と客観記録を突き合わせる
  • 安全第一。フォームが崩れる強度は扱わない

筋トレ全身法を週5で回す|実例で理解

週5運用の前提は、刺激を散らしながらも再現性を崩さないことです。毎回の主役種目は変えても、ウォームアップの手順、可動域の下限、テンポと休息の枠は一定にして、評価可能な土台を作ります。痛みゼロの反復が守れない日は、量ではなく形を優先して再設計します。

週5が成立する疲労管理の土台

高頻度の全身法では、筋損傷を過度に溜めない運用が不可欠です。具体的には、遠心性の滞在時間が長い種目・局面を連続させない、可動域は「最下点で関節が詰まらない範囲」に固定する、RIR(残レップ)を1〜3で制御する、といった基準を日々徹底します。疲労は「翌朝の可動域」と「アップ完了時の主観的重さ」で可視化します。

1日の枠組みと主役の入れ替え

各日で主役(高強度)・準主役(中強度)・補助(低強度)を割り当てます。例として、月はスクワット主役、火はプレス主役、水はヒンジ主役…という具合に回すと、同部位の高強度が連続せず、技術の練習量も確保できます。補助は弱点や関節保護の役割を担い、回数域は高めでフォーム練習に寄せます。

ボリュームと強度のガイドライン

主役は3〜5セット×3〜6回域、準主役は3〜4セット×6〜10回域、補助は2〜4セット×10〜15回域を目安とします。テンポは主役が2-0-1、準主役が2-1-1、補助が3-0-1。週トータルの繰り返し数が増えすぎた場合は、セット数ではなくテンポを短縮して密度を上げ、総疲労を抑えます。

可動域と痛みゼロの原則

可動域は「最下点で骨盤・肩の位置が崩れない深さ」を上限に設定し、動画で確認して一定化します。痛みが出るレンジを踏み抜かないことが週5成功の前提です。可動域は「広げる前に固定」。固定できたら5〜10%だけ拡張し、再び固定します。

進捗判定のKPI

同一テンポ・同一可動域で、同じRIRを保ちながら重量または反復数が継続的に伸びているかを見ます。さらにアップ完了時の主観的重さ、翌日の関節の動きやすさ、フォーム逸脱率(動画での崩れ頻度)を合わせ、成長か過負荷かを判断します。

手順ステップ(習慣の型)

  1. アップの固定化(関節準備→可動域確認→空バー)
  2. 主役のRIR決定(当日の可動域と主観で微調整)
  3. 準主役と補助で弱点部位に低リスク刺激
  4. 終了前に素早い再現セットで形をリセット
  5. 翌朝チェック(可動域・重さ感・睡眠)を記録

ベンチマーク早見

  • 週内で主役3回・準主役2回の配分が崩れない
  • 同一種目のRIRが±1以内に収まる
  • 翌朝の可動域が先週比で低下しない
  • フォーム逸脱が動画チェックで10%未満
  • 月末のデロード後にPRが更新

注意: 痛みがある日の出力上げは無意味です。量と強度ではなくレンジとテンポを整え、形が戻るまでの「練習日」に切り替えます。

週5スケジュールとメニューの全体設計

週5スケジュールとメニューの全体設計

週5全身法の設計では、各日で主役を入れ替えながらも週全体での偏りが出ないように配慮します。月〜金を想定し、土日に有酸素や完全休養を置くと、学習と回復のバランスが取りやすくなります。以下はテンプレの一例です。

曜日 主役 準主役 補助/仕上げ
スクワット系 プレス系 体幹・単関節(四頭)
プレス系 ヒンジ系 背中・上腕
ヒンジ系 スクワット系 臀・ハム
プル系 プレス軽 肩甲帯・ローイング
全身サーキット軽 弱点補強 可動域・呼吸

曜日ごとの役割と負荷の波

月水をやや重め、火木を中強度、金は軽強度とし、週内の疲労を波状に配分します。金曜はフォーム再現をテーマに可動域・テンポを整え、翌週に備える「整備日」とします。各日の主役は週ごとに種目を微入替えしてオーバーユースを避けます。

種目ローテーションの作り方

スクワット系はハイバースクワット/フロントスクワット/レッグプレス、ヒンジはデッドリフト/ルーマニアン/ヒップスラスト、プレスはベンチ/オーバーヘッド/ダンベルの三角形で回します。各週で二辺だけを使い、一辺は温存するルールにすると、疲労が偏りません。

セット法と回数域の使い分け

主役では3〜5回域のクラシカルセット、準主役は6〜10回域、補助は10〜15回域を基本とします。停滞時はレストポーズやドロップセットに頼る前に、可動域やテンポを見直します。フォームが整わない限り、強いセット法は逆効果です。

Q&A(スケジュール運用)

週5で有酸素は入れるべき 金曜または土曜に軽いゾーン2を20〜30分が目安です。

肩や腰が張る日が続く 主役の入れ替えを一段早め、準主役を可動域練習日に変更します。

仕事が遅くなる週 セット数ではなく休息時間を短縮して密度を上げます。

チェックリスト(週次)

  • 主役は週3、準主役は週2でバランス良く配分
  • 種目の三角形のうち一辺は温存されている
  • 金曜は軽強度でフォーム再現を実施
  • 可動域とテンポが日誌で固定化されている
  • 睡眠と食事の記録が欠損していない

栄養・睡眠・回復を週5用に最適化する

高頻度では、刺激の巧拙よりも回復設計が成否を左右します。練習の質を上げる狙いで摂取タイミングを整え、睡眠の深さを確保し、翌朝の可動域と主観疲労で負荷を微調整します。道具やサプリに先行して、生活の土台を整えるのが近道です。

睡眠の質を作るナイトルーティン

就寝90分前の入浴、ブルーライト削減、穏やかな呼吸練習の三点を固定します。寝る直前の高脂質・高線維は避け、消化負担の少ない軽食にとどめます。起床後は同時刻の光曝露と水分摂取で体内時計を整えます。

練習前後の栄養タイミング

運動90〜30分前に消化の良い炭水化物、終了後は糖質+たんぱく質の補給を優先します。普段から色の濃い野菜と十分な水分を取り、体重変動と尿色で不足を検知します。サプリは土台の徹底後の補助です。

回復モニタリングの実務

翌朝の可動域、安静時心拍、眠気、アップ完了までの時間を指標として記録します。いずれかが悪化なら当日のRIRを+1〜2に引き上げ、ボリュームを10〜30%減らします。週後半の金曜で帳尻を合わせず、毎日微修正します。

比較(食事の優先順位)

良い順序 タイミング→総量→質→サプリ。

悪い順序 サプリ→質→総量→タイミング。

ミニ用語集

  • RIR: 残レップ数の主観指標
  • 密度: 単位時間当たりの仕事量
  • ゾーン2: 余裕のある有酸素強度域
  • PR: パーソナルレコード(自己最高)
  • デロード: 意図的な負荷軽減週

よくある失敗と回避策

夜更かしで時間を失い朝練に切替 → 睡眠時間が短い日はRIRを+2、量を-30%。

糖質を控えて練習で失速 → 練習前後だけは優先的に炭水化物を確保。

痛みを無視して継続 → フォーム再現日に切替え、可動域とテンポを固定。

種目選択とフォームの要点

種目選択とフォームの要点

全身法の核は、スクワット・ヒンジ・プレス・プルの基本動作です。各動作の代表種目から、その日の関節状態に合うものを選び、同一テンポ・同一可動域で練習量を積みます。動画撮影とチェックリストで形を保ち、重量の伸びを支えます。

スクワット/ヒンジの押し引き

スクワットは足圧を母趾球・小趾球・踵へ三点分配し、膝は第二趾方向に誘導します。ヒンジは股関節を後方へ引き、背中は長く保つ意識でバーを体に近づけます。いずれも可動域は骨盤が後傾しない範囲に固定します。

プレス/プルの肩甲帯運用

プレスでは胸郭の下制と肘の下支え、プルでは肩甲骨の下制と後傾が鍵です。肘と手首の角度を安定させ、バー/ハンドルの軌道を最短で往復させます。ストップ&ゴーの反動頼みは避け、テンポを守ります。

代替案と関節保護の工夫

膝が不調ならハック/シシ、腰が気になるならプルはチェストサポート、プレスはダンベルに置換します。目的が筋肥大なら安定したマシンの併用も有効です。痛みゼロを守れる種目が正解です。

無序リスト(代表種目)

  • スクワット: ハイバー/フロント/ハック
  • ヒンジ: デッド/RDL/ヒップスラスト
  • プレス: ベンチ/OHP/ダンベル
  • プル: ベントロー/ラットプル/フェイスプル
  • 体幹: パロフ/デッドバグ/プランク

「軽くて美しい1回」は「重くて崩れた1回」に勝ります。週5では、次の日に同じ形でまた練習できることが価値です。

ミニ統計(フォーム監査)

  • 最下点での骨盤後傾ゼロ
  • 膝の内外ブレが動画で見えない
  • バー/ハンドルの往復軌道が一致

ボリューム・強度・密度の操作と停滞打破

伸び続けるためには、三要素(ボリューム・強度・密度)を一度に一つだけ動かす原則が重要です。同時に二つ以上をいじるとフィードバックの因果が分からなくなり、過負荷や停滞の原因特定が困難になります。

微調整のフレーム

ボリュームはセット数、強度は重量とRIR、密度は休息とテンポで表現します。停滞や疲労の兆候があれば、まず密度(休息)→ボリューム(セット)→強度(重量)の順に小変更を試します。改善がなければデロードです。

プラトー突破の順序

同RIR・同テンポで反復数が伸びないときは、可動域の固定を確認し、次に休息を短縮して密度を高めます。それでも不変なら回数域を入れ替え、最後に重量を2.5〜5kg刻みで上げます。順序を守ると副作用が小さく済みます。

デロードの設計

3〜6週に一度、ボリュームを30〜50%減らし、RIRを+2に設定します。フォーム再現をテーマに、可動域・テンポ・軌道の一致を磨きます。デロード明けはPRの更新を狙うより、スムーズな再加速を目標に据えます。

有序リスト(変更の優先度)

  1. 休息時間を10〜20%短縮(密度)
  2. セット数を±1セット調整(ボリューム)
  3. 回数域を1段階変更(強度の実効)
  4. 重量を2.5〜5kgだけ加減(強度)

ミニ統計(停滞の兆候)

  • アップ完了時の重さ感が3日連続で上昇
  • 翌朝の可動域が前週比で低下
  • フォーム逸脱率が15%以上に増加

注意: 伸び悩みでレストポーズや高負荷テクニックに飛びつくのは最終手段です。まずはレンジとテンポの固定に戻ります。

リスク管理とフォーム診断の実務

高頻度の全身法では、痛みゼロの原則を外すと継続が途切れます。危険信号を早期に捉え、強度ではなく形を修正し、必要なら種目を差し替えます。診断の視点を持てば、記録はむしろ安定して伸びます。

危険信号の見分け方

関節の鋭い痛み、可動域の急低下、アップでの左右差拡大は即座に設計変更の合図です。重さを追うより、可動域の固定とテンポの整復を優先します。違和感が出た角度を一段浅くし、動画で確認してから戻します。

チェックの順序と代替策

足圧→膝とつま先の整列→骨盤/胸郭の位置→バー/ハンドルの軌道→呼吸の順に点検します。代替は、スクワットをハック、ヒンジをスラスト、プレスをダンベル、プルをチェストサポートへ置換するなど、関節に優しい種目を選びます。

指標の突き合わせで安全担保

タイムラインに、重量/回数/RIR/休息/テンポ/可動域/主観疲労を並べ、痛みの始点と設計変更の関係を把握します。原因が分かれば、再発予防は難しくありません。

Q&A(リスク管理)

軽い痛みなら続けても良い 痛みゼロの形に戻せるなら可。戻せない日は練習日に切替。

フォーム確認の頻度 主役は毎回、準主役と補助は週2回の動画で十分です。

ストレッチはいつ セット間は軽い可動域リセット、深い静的は練習後に。

ベンチマーク早見(安全面)

  • 最下点で骨盤の後傾ゼロ
  • 膝が第二趾方向から外れない
  • 肩甲帯の下制と後傾が保たれる
  • 反動ゼロでも同回数を維持
  • 翌朝の可動域が先週比で同等以上

「出力を上げる日」と「形を磨く日」を意図的に分けるだけで、怪我は減り、週5の継続率は大きく高まります。継続こそ最大の強化です。

まとめ

全身法を週5で回すカギは、強度・ボリューム・密度の三軸を小さく動かしながら、可動域とテンポを固定して再現性を積み上げることにあります。主役の入れ替えで疲労を散らし、準主役と補助で弱点と関節保護を進め、金曜は整備日に据えます。
栄養は練習前後のタイミングと総量、睡眠は就寝前の習慣で質を確保し、翌朝の可動域・主観疲労・動画の形で安全を管理します。停滞は休息→セット→回数域→重量の順に微修正し、月次でデロードを挟みます。痛みゼロの原則を守れば、記録は安定して伸び続けます。