トレーニング記録に書くPRは、自己最高の成果を意味します。ですが、重量だけで判断すると伸びが止まったように見えることがあります。種目の特性、挙上回数、主観強度、フォームの再現性などを一緒に捉える必要があるからです。この記事では、PRの定義を整理し、実務で使える予測式と記録の枠組みを提示します。安全を担保しつつ、現場で使える精度と手間のバランスを狙います。最後にテンプレートも示し、今日から運用できる形まで落とし込みます。
- PRの種類と意味を短時間で整理します。
- 予測1RMとRPE・RIRのつなぎ方を説明します。
- 安全に試す当日の流れと合図をまとめます。
- ビッグ3と自重種目のPR設定を示します。
- 停滞期の打開策と進捗の基準を共有します。
- ログの項目例とレビュー手順を提示します。
- 表とチェックで迷いを減らす設計にします。
筋トレのPRとは何かを正しく読み解くとは?仕組み
まずは用語の整理です。PRはPersonal Record、つまり自己最高です。重量だけでなく、同条件での回数や速度、フォーム品質を含めて比べると実用度が上がります。測定の設計を決めておくと、日々の波で惑わされにくくなります。
多くの人は重量PRだけを見ます。ですが、セット構成が変わると比較が崩れます。同じ休憩、同じシューズ、同じレンジの可動域で比べましょう。記録の「ルール化」がPRを育てます。色分けやタグで条件を固定する方法も有効です。
PRの分類を決めると比較は安定する
重量PRは分かりやすい指標です。ですが、回数PRや総ボリュームPR、テクニックPRも価値があります。例えば5回で80kgから82.5kgへ上がればPR、80kgで5回から6回でもPRです。さらに、深さが増し軌道が安定した場合をテクニックPRとして別タグにします。条件を明示すれば、小さな改善も進捗として残ります。
フォーム品質を定義することも大切です。動画に基準線を引き、一定のレンジを満たすときだけ重量PRとして採択します。これで「無理に浅く」なる誘惑を避けられます。テクニックPRと重量PRを並行させることで、怪我リスクとプラトーを避けつつ前進できます。
1RMの直接測定と推定の使い分け
1RMは最大挙上重量です。直接測ると負担が大きく、頻度は低めにするのが一般的です。推定式を用いれば、日常のセットからe1RMを算出できます。EpleyやBrzyckiの式を使い、AMRAPの結果から推定します。推定は誤差もありますが、同じ式で同じ条件を積み上げれば変化は正しく捉えられます。
推定に頼り切らず、期の最後だけ軽いピーキングを入れて確認する方法もあります。日々のe1RMのトレンド、実測の確認、両輪で扱うのが実務的です。推定は頻繁、実測はまれに、という役割分担にすると疲労管理も容易です。
RPEとRIRでPRの「質」を記述する
同じ重量でも、余力が違えば意味が変わります。RPEは主観強度、RIRは残レップです。例えば「80kg×5回@RPE8」は、あと2回できる余力を示します。以前は@9でしかできなかった重量が@8になれば、明確な進歩です。重量と回数だけでなく、RPEやRIRを併記するとトレンドが見えやすくなります。
文字だけでは曖昧になりがちです。毎回の最終レップの速度感やフォームの乱れもメモしましょう。動画サムネのタイムスタンプを残すだけでも、「どの疲労で達成したか」を後から確認できます。
周期化とPR更新の頻度を設計する
常にPRを狙う必要はありません。導入期はフォームPR、中期は回数PR、終盤に重量PRという流れが扱いやすいです。週ごとのストレスを波打たせながら、4〜8週で一度の確認を入れます。上がらない週があっても、狙いのPRが違えば焦りません。狙うPRを期ごとに変えることで、停滞の見え方も変わります。
ボリューム、強度、頻度のいずれかを変え、無理なく刺激を新しくします。ミクロでは2.5kg刻み、マクロでは5〜10kgのレンジで狙うと現実的です。回数PRは小刻みに伸ばし、重量PRは節目で更新する、と役割を分けます。
同条件比較のルールを先に決める
ラック高さ、バー径、シューズ、可動域、休憩、テンポを決めます。日によって違うジムなら、タグで条件を残します。ベンチ台の高さが変わるだけでも、体感は変わります。比較の土台が揺れると、PRの意味が薄れます。ルール化してから記録し、例外をメモすれば、後からの検証が容易になります。
注意:最大挑戦の頻度が高すぎると疲労が残りやすいです。テクニックPRや回数PRを間に挟み、週内のストレスを調整してください。関節の違和感が続くときは、可動域と軌道の再確認を優先しましょう。
測定の手順
- 比較ルールを決めタグ化します。動画も残します。
- 通常セットからe1RMを算出し、日次トレンドを見ます。
- 4〜8週で軽いピーキングを設け、確認日を設定します。
- 確認日はウォームアップを規定し、1〜3シングルで探ります。
- 更新の有無に関わらず、次期の狙いPRを切り替えます。
ミニ統計
- 一般的に2.5kg刻みの重量PR更新は4〜12週の幅です。
- 回数PRは週単位で起こりやすく、平均1〜3回の上積みです。
- 可動域を厳密化すると、短期では重量が2〜5%下がります。
予測1RMとRPE・RIRの関係を実務化する

推定式は便利ですが、式ごとに前提が違います。Epleyは高回数に、Brzyckiは低回数に相対的に強い傾向があります。RPEやRIRの記録を添えると、推定のぶれを解釈しやすくなります。表と比較で具体化しましょう。
代表的な推定式の使い分けを決める
Epleyは「1RM=重量×(1+回数/30)」です。回数が多いセットでも扱いやすいのが利点です。Brzyckiは「1RM=重量×36/(37-回数)」。低回数での予測が素直です。実務では一つに統一し、長期の比較軸を固定します。迷うなら、AMRAPで取った回数にEpley、3〜6回のセットにはBrzyckiという割り切りも実用的です。
RPEとRIRを紐づけて誤差を減らす
同じ回数でも余力で意味が変わります。RPE8はRIR2、RPE9はRIR1の目安です。AMRAPで得た回数が「ギリギリ」なら@10として扱い、推定1RMの上振れを警戒します。@8で達成した同一重量は実力の底上げです。式の違いより、余力管理の一貫性が誤差を小さくします。
速度やテンポ情報を一行加える
最後の1〜2レップで挙上速度が落ちたか、テンポが崩れたかをメモします。@8のはずが実質@9相当だった、というズレを後から補正できます。動画のタイムスタンプや「最終レップに粘りあり」の短い語で十分です。小さな一行が推定の信頼性を変えます。
| 回数 | Epley係数 | Brzycki係数 | 推定1RM(80kg/Epley) | 推定1RM(80kg/Brzycki) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 1.033 | 1.000 | 82.7kg | 80.0kg |
| 3 | 1.100 | 1.059 | 88.0kg | 84.7kg |
| 5 | 1.167 | 1.125 | 93.3kg | 90.0kg |
| 8 | 1.267 | 1.241 | 101.3kg | 99.3kg |
| 10 | 1.333 | 1.333 | 106.7kg | 106.7kg |
| 12 | 1.400 | 1.440 | 112.0kg | 115.2kg |
メリットとデメリット
メリット:毎回のセットからe1RMを算出できます。疲労で重量が落ちても、余力や回数の情報で上達を検知できます。ピーキングが不要な期間でもトレンドを追えます。
デメリット:式ごとの偏りがあります。フォームの揺らぎや可動域の違いは数式に乗りません。動画やテンプレに沿ったメモを付けないと、数字だけが独り歩きします。
ミニ用語集
- e1RM:推定1RM。式で算出した最大挙上の推定値。
- RPE:主観的運動強度。10が限界、8は余力2回の目安。
- RIR:残り回数。0は限界、2ならあと2回できる感覚。
- AMRAP:限界までの回数テスト。フォーム基準は厳密に。
- ピーキング:一時的に疲労を抜き、最大を出す調整。
安全に最大へ近づくテスト設計と当日の流れ
PR更新は嬉しいイベントです。だからこそ、安全と再現性の枠を用意しましょう。ウォームアップの段取り、補助者の役割、撤退合図を決めておくと、迷いが減ります。以下は現場で使える当日の手順です。
ウォームアップの温度と段階を固定する
準備不足はリスクを増やします。軽い有酸素で体温を上げ、関節の可動域を確かめます。バーのみで10回、50〜60%、70〜80%と刻みます。呼吸とブレースのタイミングを同じ言葉で確認します。段取りが同じなら、毎回の挙上も似た動きになります。再現性が積み上がり、PRの意味が安定します。
シングルを2〜3発で探り限界を避ける
調子が良いと重ねたくなります。ですが、神経的なピークは短いです。2〜3発のシングルで調子を見て一度だけ狙います。外したら潔く撤退します。次の機会まで数週を空け、回数PRやテクニックPRで土台を広げます。狙いを散らせるのが長期的な安全策です。
補助者とセーフティの役割を前日に決める
ベンチでは合図を決め、スクワットやデッドではセーフティの高さを調整します。合図が曖昧だとバーが暴れます。動画の角度も先に決めます。側面か斜め前が分かりやすいです。撮影位置が一定なら、微細なズレも見分けやすくなります。
- 軽い有酸素3〜5分で体温を上げます。
- 関節準備と可動域の確認を行います。
- バーのみ10回、50〜60%、70〜80%と刻みます。
- シングル2〜3発で当日の速度感を確認します。
- 一度だけ本命に挑み、外れたら撤退します。
- 動画とログに条件と感覚を残します。
- 次週は回数PRや技術課題に切り替えます。
よくある失敗と回避策
ウォームアップ不足:焦って本命に入るとフォームが崩れます。段階の重量と回数をテンプレ化し、迷いを無くします。
補助の合図不一致:ラックアウトや受けのタイミングが合わず失敗します。前日に合図を文字で確認し、当日も口に出します。
撤退の遅れ:外しても繰り返すと疲労が残ります。「一度のみ」をルール化し、達成時も深追いしない運用にします。
ミニFAQ
Q. 当日に軽すぎると感じたら? A. 2.5kg刻みで上げ、@9相当で止めます。成功の余白を残すと次週が作れます。
Q. 風邪明けのPRは? A. 回数PRやテクニックPRに切り替えます。最大狙いは次期に回しましょう。
Q. 家ジムでの安全は? A. セーフティを高めに設定し、失敗時の導線を先に確認します。動画も固定位置にします。
競技別・種目別のPR設定を現実的に設計する

PRの意味は種目で変わります。レンジや支点が違えば、同じ重量でも難しさは異なります。ビッグ3、自重、さらには水泳のタイムPRまで、比較の軸を合わせて設計します。環境差もタグで吸収しましょう。
スクワット・ベンチ・デッドの比較軸
スクワットは深さ、ベンチは胸タッチと停止、デッドは引き切りとロックアウトを基準にします。バー径や台の高さも結果に影響します。重量PRは「フォーム基準を満たした記録のみ」とし、可動域が浅い日はテクニックPR扱いにします。これで数字だけの競争から距離を取れます。
自重種目のPRを数式化する
懸垂なら重量ベルトの追加で「体重+外部負荷」を記録します。腕立てはテンポと可動域を規定します。AMRAPの回数PRだけでなく、同じRPEでの回数増加もPRです。体重が変動する時期は「相対負荷=外部負荷/体重」で比較すると変化が読みやすくなります。
水泳のタイムPRを筋トレ文脈に接続する
水泳はタイムPRが主指標です。筋トレではスターター、ストロークパワー、キックの持久力を補助します。上半身はプル強化、下半身はヒップヒンジ系で推進力を支えます。筋トレ側のPRは、タイムPRの土台づくりと位置づけます。週の配置と疲労管理を合わせると、両方のPRが共存します。
- スクワット:深さ基準とシューズを固定します。
- ベンチ:胸タッチと停止時間を決めます。
- デッド:グリップとロックアウトを定義します。
- 懸垂:体重と外部負荷を明記します。
- 腕立て:テンポとレンジを統一します。
- 水泳連動:下半身の日と泳ぐ日の間隔を調整します。
- タグ:環境差はタグで可視化します。
チェックリスト
- フォーム基準は文章で書き出したか。
- 動画の角度と距離は固定できているか。
- ラック高さやセーフティは記録したか。
- シューズやバー径の違いはタグ化したか。
- 自重種目は相対負荷を併記したか。
「重量が伸びない週でも、動画で見ると深さが増していた。テクニックPRとして記録しておいたら、翌月に重量PRも出た。焦らず積む意味が分かった。」
伸ばすためのプログレッションと停滞脱出
PRは狙って生まれます。刺激の新規性と回復の両立を設計すれば、停滞は多くの場合で動きます。重量、回数、セット、可動域、テンポ、グリップのいずれかを変え、同時に休養の質も上げます。小さく動かして、大きく積む方針です。
進歩の軌道を複線化する
重量だけでなく、回数PR、同重量でのRPE低下、同RPEでの重量増加、動画での軌道安定など、複数の線路を用意します。どれかが止まっても、他が進みます。可動域を広げる期は重量が落ちても構いません。次期に重量PRが戻れば、総合の実力は高まります。
停滞期の打開はボリューム設計から
同じ強度での総レップ数を10〜20%増やすと、数週で回数PRが戻ることが多いです。週内の疲労ピークを一日に集めすぎないよう分散します。アクセサリーを増やすより、メインの練習量を微増させると効果的です。可動域やテンポの統一も、神経的な学習を助けます。
回復のレバーを増やす
睡眠時間、炭水化物の量、ストレス管理は実力に直結します。就寝前のブルーライト、寒暖、カフェインのタイミングを整えます。食事はセッション前後の補給に集中します。生活のノイズを減らすと、同じ練習が別物になります。回復で勝つとPRは近づきます。
- 週の総レップを10〜20%だけ増やす。
- 強度の日と技術の日を分ける。
- 可動域とテンポを文字で固定する。
- 睡眠と補給をセッション中心に置く。
- アクセサリーは目的に直結させる。
- 動画の角度を統一し評価を早くする。
ベンチマーク早見
- 回数PR:同重量で+1〜2回をまず狙う。
- 重量PR:2.5kg刻みで4〜12週の幅を想定。
- RPE低下:同重量で@9→@8なら実力上昇。
- 可動域:深さ基準を厳格に、短期の低下は許容。
- 疲労サイン:睡眠低下と関節違和感は一旦負荷減。
注意:停滞期に高頻度で最大挑戦を繰り返すと、疲労は増し再現性が落ちます。狙いのPRを回数やテクニックに切り替え、神経的な負荷をコントロールしましょう。
ミニ統計
- 週当たりのメインセットが3→6に増えると、回数PRの出現率が上がる傾向があります。
- 睡眠が6時間未満の週は、@9での成功率が下がるケースが目立ちます。
- 可動域を固定した期は、翌期の重量PR成功率が高まりやすいです。
記録管理の実践とデータ可視化
良い記録は次の行動を速くします。テンプレ、色分け、簡単な指標で、読み返しやすいログを作りましょう。アプリでも表計算でも構いません。重要なのは、条件と結果が一目で分かる構造です。
ログの項目を最小で強くする
日付、種目、重量、回数、RPE/RIR、可動域タグ、動画リンクを基本にします。コメント欄は短く、次回の行動に直結する言葉にします。例えば「足幅を2cm広く」「息を先に吸う」などです。読み返しの速さが、練習の質を押し上げます。
簡易指標でトレンドを読む
e1RMの週平均、同重量@8での回数、同回数でのRPEの推移を折れ線で見ます。下降が続いたら負荷を調整し、上昇の週はアクセサリーを絞って記録を狙います。数字は行動の引き金です。使いやすい少数の指標に絞ると、判断が速くなります。
月次レビューで狙いを切り替える
月に一度、狙うPRを更新します。フォーム基準を再確認し、次の4〜8週でどのPRを狙うかを決めます。成果は動画とセット数で可視化します。レビューは10分で十分です。迷いが削れ、現場の集中が高まります。
| RPE | 目安RIR | 活用場面 | メモ |
|---|---|---|---|
| 7 | 3 | 技術練習やフォーム調整 | テンポを一定に保つ |
| 8 | 2 | ボリューム確保と土台作り | 回数PRを狙いやすい |
| 9 | 1 | ピーク前の確認セット | 動画で軌道を厳密に |
| 10 | 0 | 本番や記録挑戦 | 頻度を低く保つ |
レビュー手順
- 月のe1RMと回数PRを一覧にします。
- 達成した条件と未達の条件を分けます。
- 次期の狙いPRを一つに絞ります。
- ウォームアップとセット構成を更新します。
- 生活レバー(睡眠・補給)を一つ改善します。
ミニFAQ
Q. アプリと表計算はどちらが良い? A. 使いやすさで選びます。条件タグと動画リンクが付けやすい方を使いましょう。
Q. どの指標を残すべき? A. e1RM、同重量@8の回数、同回数のRPE。三つで十分です。増やしすぎると行動が遅くなります。
Q. チームで共有するには? A. タグと動画の命名規則を統一します。誰が見ても条件が分かる状態を目指します。
まとめ
PRは「自己最高」ですが、重量だけではありません。回数、RPE、可動域、軌道の安定も、現場では価値ある記録です。推定式は便利ですが、同じ式と同じ条件で積み上げることが信頼を生みます。周期化で狙いを変え、テクニックPRと重量PRを往復させれば、長期の伸びは滑らかになります。
当日の段取りをテンプレ化し、撤退もルールにします。ログは最小で強く、次の行動に直結する言葉で残します。停滞は、刺激の新規性と回復の質で動きます。今日の一行の記録が、数週後のPRを連れてきます。小さく進めて、大きく積みましょう。


