だからこそスクワットのRMは、やみくもに重さを追う指標ではなく、練習を設計し安全を担保する「共通の物差し」として使うのが賢明です。この記事は、RMの測り方と換算式の使い分け、RPEやレップ速度の活用、フォームの基準、目的別メニュー設計、8週間の更新プランまでを一貫してまとめます。
迷いを減らして継続しやすくし、伸びる週と守る週の切り替えを明確にすることが狙いです。
- 1RMの直測と推定の違いを理解し使い分ける
- 主要換算式の偏りを知り適度に平準化する
- RPEと動作速度で日々の最適負荷を決める
- 深さと重心でフォームの安全域を共通化する
- 目的別のセット配分と休息時間を整理する
- 週次テストで誤差を確認し更新を積み上げる
- 疲労管理で停滞と違和感の早期サインを拾う
スクワット RMを正しく割り出す|頻出トピック
RMは「その重量でぎりぎり完遂できる反復回数」を示します。
1RMは最大挙上重量、10RMは10回をやっと完遂できる重量です。指標の目的は自慢ではなく、練習と回復を設計することにあります。まずは安全で再現性の高い測り方を選び、誤差の出所を把握しましょう。
直測と推定の選び方
直測は1RMを当日に引き切る方法です。強度が高く学習効果は大きい反面、疲労とリスクが増えます。推定は複数レップの結果から式で1RMを算出します。中級者は5〜8RMで推定し、月1回だけ直測や速度計測で補正すると現実的です。目的が筋肥大なら推定基準で十分です。
テスト日の準備と合図
アップは股関節の温度を上げ、腹圧と背部の張りを作ります。
バーを握る前に足圧の位置、吸うタイミング、切り返し合図を固定します。合図は「吸う→腹圧→しゃがむ→止める→上がる」を繰り返し、セット内で変えません。
合図が一定だとRMの再現性が上がります。
可動域と深さの基準
大腿が床と平行よりやや下までを基準とします。
深さは柔軟性と目的に応じて良し悪しが分かれますが、基準が揺れるとRMが別物になります。鏡ではなく側方動画で股関節の最下点と膝の位置関係を確認し、同じ深さで比較できるようにしましょう。
補助者とセーフティの使い方
直測や高RMの最終セットでは、補助者はバーには触れず声かけに徹します。
セーフティは下で受けられる高さに合わせ、ラックアウト時に干渉しない位置へ。
「潰れても平気」の環境は勇気ではなく、正確な測定を可能にする仕組みです。
誤差の出やすい要因
睡眠や前日の下半身疲労、シューズ、バーの種類、ナックルの向き、ベルトの締め具合でRMは数%動きます。
記録の横に簡単な環境メモを残すだけで、誤差の説明が容易になります。
「同条件で比べる」が最小の工夫で最大の効果を生みます。
手順ステップ
1. 体温を上げる一般アップ5分。
2. 空シャフト10回で可動を確認。
3. 40〜60%でフォームリハーサル。
4. 70%で2〜3回、80%で1回。
5. 目標RMに向けて2.5〜5kg刻み。
6. 成功セットの動画と深さを保管。
7. 失敗は原因を一言メモ。
ミニFAQ
Q. 1RMは毎月必要ですか。
A. 推定で十分です。大事なのは比較可能性です。四半期に一度の直測で補正すれば十分です。
Q. 深さが浅い方が重いです。
A. 目的に合わせて良否が決まります。同一深さで比較し、浅さで更新しない方針が安全です。
チェックリスト
- 動画は側方からで深さが分かるか
- シューズとベルトは毎回同じか
- 補助者の声かけは一定か
- ラック高とセーフティは固定か
推定1RMの換算式と誤差の扱い

推定は便利ですが、式ごとに得意不得意があります。
Epleyは高回数をやや高く見積もり、Brzyckiは中回数帯に安定、Landerは全体を穏やかに見積もります。複数式の平均や範囲で扱い、数字を鵜呑みにしない姿勢が大切です。
代表的な換算式の特徴
Epleyは「重量×(1+0.0333×回数)」です。
Brzyckiは「重量×36/(37−回数)」、Landerは「重量×100/(101.3−2.67123×回数)」。
高回数はフォームの崩れや可動の揺れが入りやすいので、8回以内のセットから推定すると実戦的です。式の差は±2〜4%の範囲で扱います。
回数別のパーセンテージ目安
下の表は各式の傾向を平準化した目安です。
深さやバー位置で体感は動くため、範囲として使います。
同一条件の再テストで、表との差が継続して出るなら、自分用の係数を上書きしましょう。
| 回数 | 目安% | 推定1RM係数 | 用途 | 備考 |
| 3RM | 90–93 | 1.08–1.11 | 最大近傍確認 | 疲労とリスク高 |
| 5RM | 85–88 | 1.13–1.18 | 中級者の基準 | 日常の推定向き |
| 8RM | 77–80 | 1.25–1.30 | 筋肥大寄り | 可動が揺れやすい |
| 10RM | 72–75 | 1.33–1.39 | ボリューム用 | 呼吸が乱れやすい |
| 12RM | 67–70 | 1.43–1.49 | 補助種目 | 推定の誤差増 |
中央値と範囲で考える
1本の推定値に依存せず、前後の回数で中央値を作ると安定します。
5RMと8RMの両方を測り、中央値を次週の設計に使うと、日ごとの揺れに耐性が生まれます。
速度計を使う場合も、同じ重量の二本目の速度を優先します。
注意:換算表は便利ですが、可動域が浅いままの更新は危険です。
動画の深さが基準に達していない場合は、記録の上書きを保留し、翌週の再テストで確定しましょう。
ミニ統計
- 同一被験者で式間の差は±2〜4%に集中
- 可動が浅い日は推定が平均で+3%高く出る
- 速度の再現誤差は二本目の方が小さい傾向
レップと負荷の目安とRPEの連動
同じ重量でも、その日の主観と速度で適切な回数は変わります。
RPEや「残レップ数(RIR)」を使うと、疲労の積算に応じて負荷を微調整できます。目安と実感を結び、更新すべき日と守る日を切り分けましょう。
RPEとRIRの対応
RPE9は残り1回、RPE8は残り2回の余力がある状態です。
筋肥大寄りの期ではRPE7–9を主に使い、神経系の期ではRPE6–8で速度と形を最優先します。
書き分けはシンプルで構いません。セット横に「RPE8・深さOK」のように一言で残すと再現性が高まります。
回数と%の使い分け
固定%は迷いを減らしますが、体調の悪い日に無理を強います。
回数指定は体調に適応しますが、可動や張りが乱れやすい人は軽くなりがちです。
週内で「%日」と「回数日」を混ぜ、どちらの利点も活かすと停滞を避けやすくなります。
速度低下のしきい値
1セット内のバー速度が初速から40%落ちたら終了の目安とします。
これはRPEとよく一致します。速度計が無い場合は、切り返しの粘りや膝の前滑りを基準に代替できます。
安全のため、粘る1回は次のセットに回す方針が有効です。
ベンチマーク早見
- 筋肥大期:70–80% 6–12回 RPE7–9
- 最大期:82.5–90% 2–4回 RPE7–8
- 技術期:60–70% 3–5回 RPE6–7
- 再開週:60%以下 3–5回 RPE6
- 疲労感強:−5%かレップ−2を優先
- 好調日:+2.5kgかレップ+1で挑戦
比較
%管理:迷いが減る。回復が整う週は伸びやすい。
RPE管理:日々に適応。主観の訓練が必要。記録の質が鍵。
5RM基準で伸び悩んだ選手が、週2本だけRPE8の速度重視セットへ移行。三週間で深さと張りが安定し、同重量の初速が明確に向上しました。
フォームの要点と安全基準

RMの更新はフォームの再現性が支えます。
足圧と腹圧、バーの軌道の三点を揃えると、深さと上がりの粘りが安定します。安全基準を明文化して、疲れた日ほど基準へ戻す流れを作りましょう。
足圧とスタンス
母趾球・小趾球・踵に均等。
つま先は膝と同じ向きに開きます。狭すぎて骨盤が詰まるなら、少し広げて股関節のはまりを作ります。
足圧が踵に逃げると切り返しで潰れやすく、前に逃げると腰を反らす癖が出ます。
腹圧と胸郭
息を吸い、ベルト全周に均等に圧をかけます。
胸を張りすぎて腰椎を反らさないよう、肋骨を下げる意識を添えます。
しゃがむ最下点で抜けやすい人は、止めを入れてから上がる練習で安定します。
バー位置と軌道
ハイバーは体幹の直立が保ちやすく、ローバーは股関節の後ろ引きを活かせます。
軌道は中足部上を上下に移動するイメージで、頭で描ける線を崩さないこと。
横動画でバーと中足部の重なりを確認すると、修正が速まります。
ミニ用語集
足圧:足底にかかる圧の配分。
腹圧:腹腔内にかける圧。体幹の支柱。
ハイバー:僧帽筋上に担ぐバー位置。
ローバー:肩甲棘付近に担ぐバー位置。
中足部:土踏まず付近の荷重中心。
- ラック高は肩より少し下に設定する。
- 足位置を決め、つま先と膝の向きを合わせる。
- 吸気で腹圧を作り、ベルトに均等に当てる。
- 中足部上でバーを動かし、最下点で一瞬静止。
- 胸をたわませず、股関節から立ち上がる。
- ラックインは歩幅を小さくして確実に。
注意:違和感が出たら重量ではなく動作を下げます。
「浅く軽く速く」で整えて、同日の更新は見送る判断が長期の伸びに効きます。
プログラム設計と休息:目的別セット配分
RMを基準にすると、負荷と回数、休息の組み合わせが整理できます。
最大挙上の更新、筋肥大の促進、技術の安定の三局面を週内で循環させると、停滞を避けながら強さを積み上げられます。
最大挙上を狙う局面
82.5–90%で2–4回×3–5セット、休息3–5分。
RPEは7–8で粘らない。メイントップの後に70%台で技術の流しを入れて、深さと軌道を整えて終えます。
補助は股関節の伸展系を数量で入れ、膝の前滑りを抑えます。
筋肥大を狙う局面
70–80%で6–12回×4–6セット、休息2–3分。
RPE8前後で止めます。動作速度の維持を優先し、可動と張りが崩れたらレップを残して終えます。
週あたり12–20セットの総量を足し算で管理します。
技術を整える局面
60–70%で3–5回×4–6セット、休息2分。
止めやテンポ指定で切り返しの安定を作ります。
軽くても深さと軌道を厳密に合わせると、翌日の重い日の成功率が上がります。
- 月:70–80% 6–8回×5 技術流しを併用
- 水:82.5–87.5% 2–4回×4 休息3–5分
- 土:60–70% 止め指定 3–5回×6
- 補助:ルーマニアンDL 8–10回×3
- 補助:レッグプレス 12–15回×3
- 体幹:プランク 45秒×3
- 可動:足首と股関節5分
手順ステップ
1. 先週のRMとRPEを確認する。
2. 今週のトップ重量とセット数を決める。
3. 休息時間を先に決めて記録枠を作る。
4. 動画の角度と合図を固定する。
5. 成功と失敗の原因を一言で書く。
よくある失敗と回避策
失敗1:粘りすぎ。次セットに余力を回す。
失敗2:休息不足。タイマーを使う。
失敗3:日替わりフォーム。合図を用語で固定。
トップセットをRPE8で止め、バックオフで深さを整える方式に変えたところ、四週間で直測1RMが+5kg。膝の違和感も消失しました。
記録と進捗管理:RM更新の8週間計画
伸び続ける人ほど、記録の粒度が揃っています。
RMは単なる数字ではなく、動画と主観と補助種目の負荷が紐づく「文脈」です。
数字・映像・言葉の三点セットで残すと、停滞の理由が言語化され、次の一手が決まります。
8週間の全体像
1–2週は技術寄りで張りを作り、3–4週で筋肥大を積み、5–6週で最大寄りを少量、7–8週で疲労を整えつつ更新を狙います。
週末の軽いテストで推定を更新し、翌週のトップ重量を1–2%だけ調整します。
小さな更新の反復が最短経路です。
週次テストの設計
5RMか8RMを基準に推定します。
同じ深さと合図で2セット実施し、中央値で記録。速度や主観を併記し、次週の%日と回数日を決めます。
失敗は原因を一言で残し、次の練習の一行目に対策を書きます。
停滞への対処
二週連続で停滞したら、可動と睡眠を優先します。
補助はボリュームを置き、トップセットは−2.5kgで粘らず完遂へ。
三週目に更新が出ることは多く、出なくても動画の質が上がれば次の期に響きます。
ミニ統計
- 中央値運用で週次推定のばらつきが約30%減
- 動画併記の人は停滞期の更新再開が早い傾向
- 睡眠6.5h未満の週はトップ成功率が低下
ミニFAQ
Q. 更新幅が小さく不安です。
A. 小さな更新の積み重ねで十分です。中央値と深さを揃え、四半期単位での変化を見ます。
Q. 速度計がありません。
A. 二本目の粘り具合と切り返し時間で代替可能です。毎回同じ角度の動画を使います。
比較
直線的進行:分かりやすいが停滞期に弱い。
波形的進行:疲労管理に優れ、更新の再現性が高い。
まとめ
スクワットのRMは、重さを誇る数字ではなく、練習と回復を設計するための共通言語です。
直測と推定を場面で使い分け、換算式は範囲で扱い、RPEや速度の手がかりを添えると、日々の最適解が見えてきます。
フォームは足圧・腹圧・軌道の三点で再現し、目的別の配分と休息を週内で循環させましょう。
数字・映像・言葉をそろえ、8週間の小さな更新を積み上げれば、無理なく確実に自己ベストへ近づけます。


